不動産を売却して得た利益の計算方法は?税金もかかる売却益、譲渡所得について解説

不動産を売却して出た利益は「売却益」と言われます。
税務上の呼び方では「譲渡所得」です。

所有している土地、建物などの不動産を売却した場合、その利益を計算して当該利益にかかってくる税金を納めなければいけません。
逆に利益ではなく損失が出た場合はどうなるのでしょうか。
その売却利益(損失)の計算方法と、税金について解説していきます。

税金は何に対してかかる?税金の基礎知識。

税金は基本的に「所得」に対してかかります。
税金を計算する際、その計算根拠となるのは「所得」ですが、そもそも所得とは何でしょう。
各用語の説明から計算方法まで見ていきましょう。

そもそも所得って?

所得とは、収入(売上)から必要経費を差し引いたものです。
不動産の売却時の簡易的な計算に置き換えると、例えば5,000万円で売却できた場合は、5,000万円が収入(売上)。
ただし、仲介手数料などの諸費用が合計で180万円かかったと仮定すると、180万円が経費。
さらに、建物が減価償却により現在の税務上の価格が4,000万円だったとすると、それも経費として計算します。
そして、5,000万円から経費である4,180万円を差し引いた820万円が所得となります。

(計算例)
5,000万円(売上) – 180万円(経費) – 4,000万円(経費) = 820万円(所得)

 

会社員に置き換えた場合の例

わかりやすい会社員を例にとってご説明しますと、会社員にとっての「収入」は給料や賞与の合計のことで、源泉徴収票の支払金額欄に書かれている金額です。
そして1年間で得た収入から給与所得控除を差し引いたものが「所得」になります。
給与所得控除は、いわばサラリーマンの必要経費を見積もったもので個々の収入によって算出されるものです。
そして所得には色々な種類があり、所得税法では利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類に分けられています。
税金はこの「所得」に対してかかるものなのです。

「総合課税」と「分離課税」

「総合課税」と「分離課税」という課税の種類があります。

不動産売買においては「分離課税」に該当します。
所得税は原則的には「総合課税」となり、所得金額を合計して税額を計算する方法を取ります。
会社員であれば給与所得と他の所得を合算して合計所得の金額に応じて税率が決まってくるので、それぞれの税金を計算して確定申告で納税することになります。
ただし、上記10種類の所得区分のうち退職所得、山林所得、土地建物(一部利子所得、配当所得も)にかかる譲渡所得は「分離課税」となり、ほかの所得とは合算せずに別々に分けて税額を計算して確定申告する方法をとります。

課税の種類 所得の種類 概要
総合課税 利子所得 預貯金及び公社債の利子など
配当所得 株主や出資者が法人から受ける剰余金や、利益の配当、剰余金の分など
不動産所得 土地や建物などの不動産の貸付けなど ※譲渡所得に該当するものを除く
事業所得 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業からの所得
給与所得 勤務先から受ける給料、賞与などの所得
譲渡所得 ゴルフ会員権、金地金などの資産を譲渡することによって生ずる所得
一時所得 営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得
雑所得 他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得
分離課税 株式等の譲渡所得 株式等の譲渡による事業所得
土地や建物の譲渡所得 土地や建物の譲渡による所得
山林所得 山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得
退職所得 退職で受け取る退職金など

譲渡所得とは何か

特定の資産や権利を譲渡した際に得た所得を譲渡所得といいます。
この「譲渡」には、売却はもちろん無償での譲渡も含まれます。
対象となる資産には土地,建物の他、機械器具、ゴルフ会員権、特許権、著作権、書画、宝石などがあります。

計算方法

ここからは具体的な計算方法を解説していきます。

売却時の利益の計算方法は、売却した価格である譲渡価額から取得費、譲渡費用、特別控除額を差し引いて譲渡所得を算出する以下の算式となります。

譲渡所得(売却益)の計算式

譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用 – 特別控除額

譲渡価額 売却によって得られる収入金額
取得費 不動産の購入価格だけではなく、仲介手数料、登録免許税、司法書士報酬、不動産取得税など。ただし、建物は所有期間中の減価償却費相当額を控除する。
譲渡費用 仲介手数料、測量費など土地や建物を売るために直接要した費用、建物を取壊して土地を売ったときの取壊し費用

自分が住んでいる家や敷地を売ったとき、以前に住んでいた家と敷地を住まなくなってから3年後の12月31日までに売ったときなど、一定の要件を満たす場合には3,000万円の特別控除を受けられます。

つまりマイホームの売却で利益が出ても3,000万円以内であれば税金がかからないことになります。

税額の計算

上記で算出した譲渡所得についてかかってくる税金(分離課税)は「短期保有」か「長期保有」かで異なります。
不動産を売った年の1月1日現在で、その不動産の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」に、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になるのです。

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得 15% 5%
短期譲渡所得 30% 9%

ただし、2013年から2037年までは所得税と併せて所得税額に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税を加算して申告・納付することになります。

 

取得費の「減価償却費」をもう少し詳しく

「減価償却」というのはご存知でしょうか?
建物には税務上で「耐用年数」というものが定められています。
一般的には鉄筋コンクリートで47年、鉄骨造で34年、木造で22年軽量鉄骨造で19年などとされています。
つまり、上記の年数で価値がゼロになるという考え方です。
あくまでも税務上の考え方なので、市場価格と同一ではありませんが、不動産売却の際にはこの耐用年数を参考にします。

構造 耐用年数
鉄筋コンクリート造 47年
鉄骨造 34年
木造 22年
軽量鉄骨造 19年

購入価格や建築費用をベースに計算を行うのが一般的です。

例えば、5,000万円で建築した木造の家を10年後に売却する場合の計算を下記に記載します。

①毎年の減価償却額の計算

5,000万円 ÷ 22年 = 約227万円/年

 

②10年減価償却後の価格の計算

227万円 × 10年 = 2,270万円

 

上記の計算により、2,270万円というのが現在の価格となります。

したがって、取得費には2,270万円が計上されることになります。

※簡易的な計算のため若干実際の計算と異なる場合があります。

3,000万円の特別控除

自宅を売却した場合、長期譲渡または短期譲渡のいずれに該当する場合でも、最高で3,000万円の特別控除の特例が適用されるケースがあります。
ただし、譲渡所得が3,000万円に達しない場合は、特別控除の額は譲渡所得の金額が上限になります。

 

10年以上の所有しているマイホームは更にお得に

自分が住んでいる土地や建物を売った年の1月1日現在で、そのマイホームの所有期間が10年を超えている場合はさらに軽減税率が適用されます。

前述の、3,000万円の特別控除の特例を適用した後の課税長期譲渡所得金額に対しての税率は下記の通りとなります。

譲渡所得金額 所得税 住民税
6,000万円までの部分 10% 4%
6,000万円を超える部分 15% 5%

 

税率のまとめ

上記のように定められている税率ですが、なかなかややこしいかと思います。

不動産の保有期間と軽減税率の適用の有無によって合計の税率はどうなるのか、以下の通りまとめてみました。

期間 税率 内訳
所有期間が5年以下 39.63% 所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%
所有期間が5年超 20.315% 所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%

 

所有期間が10年超でマイホーム軽減税率を適用できた場合は以下の税率。

課税対象額 税率 内訳
譲渡所得6000万円以下の部分 14.21% 所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%
譲渡所得6000万円超の部分 20.315% 所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%

 

計算例

実際に計算してみましょう。
上記の合計税率を使って実際に税金がいくらくらいかかるのか、以下に計算例を示しました。
例えばマイホームを売却した時の譲渡価額7,600万円、取得費4,200万円、譲渡費用が300万円とすると、譲渡所得は「7,600万円−4,200万円−300万円」で3,100万円ですが、マイホームなのでさらに3,000万円の特別控除を適用して課税譲渡所得は100万円となります。

この譲渡所得にかかる税金は所有期間などによって以下の通りとなります。

所有期間5年以下
100万円×39.63%=396,300円

所有期間5年超
100万円×20.315%=213,150円

所有期間10年超で軽減税率の特例適用
100万円×14.21%=142,100円

このようにマイホームの売却であれば、たとえ大きな利益が出ていたとしてもある程度の期間居住していれば税金はかなり抑えられるものであることがお分かりいただけるかと思います。

譲渡損失

譲渡所得がゼロ以下、つまり損失が生じた場合は勿論その分の税金を払う必要はありません。

前述の計算式、の結果がゼロ以下であれば税金はありません。(以下)

譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用 – 特別控除額

ただ、所得の損失分を他の所得と損益通算することはできません。

ただし、マイホームを売ったときは損失を控除できる特例があります。
国税庁のホームページによれば、その条件は以下の通りとなっています。

新たにマイホームを買換える場合の特例

マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間に新たなマイホームを取得し、年末においてその新たなマイホームの取得に係る住宅ローン残高がある場合は、一定の要件の下で、売ったマイホームの譲渡損失の金額について損益通算及び繰越控除をすることができます。

新たにマイホームを買換えない場合の特例

マイホームの譲渡契約締結日の前日において住宅ローン残高があるマイホームを売った場合は、一定の要件の下で、そのマイホームの譲渡損失の金額について損益通算及び繰越控除をすることができます。

詳細は国税庁HPを御覧ください。

まとめ

不動産の売却時に発生する利益の計算、そしてその利益=譲渡所得に対してどのように税金がかかるのかお分かりいただけたかと思います。
所有期間によって税率が違い、特にマイホームであれば相当程度の節税が可能であります。
今後不動産を売却することを検討している方は、ぜひ上記の各種条件を精査した上で、いくら税金がかかるのかを前もって計算しておくことが望ましいと思います。