不動産を売却した場合の多くは消費税の支払いが免除されますが、売主の属性や状況、売却する物件によっては消費税が課税されることもあります。
そのため、消費税について正しく理解していなければ予想外の支出となる可能性があり、注意が必要です。
また、万が一納税が必要となった場合に備え、いつ・どうやって納税するのかも知っておくべきです。
そこで、この記事では不動産取引において消費税が課税されるケースについて解説します。

消費税が課税になる4つの要件

不動産の取引にかかわらず、消費税は消費税法で定められている以下の要件を全て満たした場合に課税対象となります。
そのため、不動産を売却する前にチェックしておくことをおすすめします。

  • 国内における取引であること
  • 「事業者」が事業として行うものであること
  • 対価を得て行われるものであること
  • 資産の譲渡、貸付け、及び役務の提供であること

たとえば不動産の売買をした場合は「資産の譲渡」にあたりますが、売主が個人の場合は「事業者」ではないため、消費税は免税となります。
なお、事業者とは法人格だけでなく個人事業者も含まれますが、全ての事業者が課税されるわけではなく免税事業者という扱いになる場合もあります。
このことからも、取引する不動産だけでなく売主の属性によって消費税の支払い義務が決まることを知っておく必要があります。

個人の不動産売却で消費税が課税されるケース

売主が個人の消費者として建物や土地、マンションを売却した場合は原則非課税ですが、「事業の前々年の課税売上が1,000万円を超えた場合」もしくは「前年の1~6月の間の課税売上が1,000万円を超え、かつ給料支払額の合計が1,000万円を超えた場合」のどちらかを満たすと課税業者という扱いになり、納税義務が発生します。
つまり、不動産投資を事業として継続しており、その中で不動産資産の売買を行うことで上記の要件を満たしてしまった場合は、課税されることになります。
また、不動産を売却する際に不動産会社を通じて売買した場合には仲介手数料がかかり、売却価格によって報酬は次のように上限額が定義されています。

売却価格が200万円以下の場合売却価格×5%+消費税
売却価格が200万円を超え400万円以下の場合売却価格×4%+2万円+消費税
売却価格が400万円を超える場合売却価格×3%+6万円+消費税

これ以外にも売却時に登記を司法書士へ依頼した場合の報酬や登録免許税、解体費、測量費、農地転用費用といった費用についても消費税の対象です。

個人事業主や法人の不動産売却で消費税が課税されるケース

個人で不動産を売却した際には前述した消費税がかかりますが、個人事業主や法人の場合はこれ以外にも売却した不動産自体に消費税がかかります。
ただし、全ての不動産が課税対象となるわけではなく「土地以外の物件」に限定されることがポイントです。
たとえば中古戸建やマンションを売却した場合は「建物部分」のみが対象となり、土地部分については課税されません
つまり、消費税を計算するためには対象部分だけ売却代金から金額を切り分けて消費税額を算出する必要があります。
しかし、建物価格だけ抽出し計算する方法は非常に複雑となることから、確定申告の申告額を間違える所有者は多いです。
そのため、売却価格から建物価格を分離させることに自信がない場合は、税理士に相談することをおすすめします。
なお、消費税の納税額が年間48万円を超える事業者については国税庁より中間報告と中間納付が必要とされており、税務署から送られてくる納付書を使って納税することになります。
このように、納税額によっても消費税の納付方法が変わることを知っておく必要があるといえます。

個人事業主や法人の不動産売却で消費税非課税のケース

前述したように、不動産取引において「土地」は売主が個人、個人事業主、法人に限らず消費税は課税されません。
これは、そもそも消費税は、商品の販売やサービスの提供など「消費される」ものに対してかかる税金と定義されているのが理由となっており、土地は消費されないことから非課税という扱いになります。

また、土地の売買には所有権だけでなく借地権や地上権といった権利も含まれますが、同様に消費税はかかりません。
つまり、土地のみで売買するケースはどのような取引内容であれば消費税は課税されないといえます。

不動産売却の消費税の計算方法

不動産売却によって発生する消費税を計算する場合は建物と土地を分離させる必要がありますが、計算する上で固定資産税の評価額を参考にするのが一般的です。
たとえば5,000万円の中古戸建を売却し評価額が建物2,000万円土地1,500万円である場合、建物の割合は次のようになります。

5,000万円×2,000万円÷3,500万円=約2,860万円

この割合額に対し、消費税の税率が10%であれば約286万円が消費税となります。
上記の計算方法は戸建てだけでなくマンションでも使うことができますが、マンションの場合は敷地に対して持分割合が設定されています。
そのため不動産会社に持分を調べてもらう必要があるため、確定申告に間に合うようなるべく早い段階で依頼することをおすすめします。

不動産売却の消費税の納付方法

不動産売却で発生した消費税は動産と違って自動的に納付されるわけではないことから、必ず売却した翌年に確定申告する必要があることを知っておくべきです。
確定申告は2月16日〜3月15日が期日となっており、特段の事情がない限りこの期間内に申告を完了させなければなりません。
万が一理由なく遅延した場合は申告漏れとなり、利子税を含めた延滞料を支払うことになるため注意が必要です。
また、前述したように消費税の納税額が48万円を超える事業者の場合は税務署から直接納付書が届きますので、その分についてはそのまま支払うだけで納税となります。
ただし、納付書に記載されている税額はあくまでお中間税額となっており通年ではないことから、結局確定申告することになります。

まとめ

不動産を個人で売却した場合は原則消費税はかかりませんが、1,000万円の売上や給与の支払いがある場合は課税対象となるケースがあります。
さらに、不動産の本体価格以外にかかる仲介手数料や登記費用といった諸費用については、課税されます。

このことからも、不動産を売却する場合は「必ず課税される項目」と「ケースバイケースの項目」に分けておくことがポイントです。
また、土地は消費されるという扱いでないため個人だけでなく個人事業者や法人であっても非課税となります。
この定義があることで、中古戸建やマンションを売却する場合は「建物」と「土地」に分離させて消費税を計算することになります。
このように計算した内容を確定申告によって申告することになりますが、計算が複雑で間違えやすいポイントといえます。
そのため、計算に自信がない場合や他に確定申告する内容がある場合は税理士に相談し、間違えずに納税することが重要です。

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