住み替えの人必見!不動産の売却と購入を同時に行う時の税金対策について
不動産の売買には税金が絡んできます。
現在の自宅の売却で得る資金を新居の購入に充てようと思っていた時に忘れてはいけないのは税金対策です。
特に、国が用意してくれた居住用財産を買換えた場合に使える特例は重要です。
この特例を適用できるかどうかは大切ですから、どのような制度か、そして現自宅と新居の適用の要件や注意点は何か、後で慌てることのないように押さえておきましょう。
最初に「譲渡益」の「譲渡損」用語説明
「譲渡益」と「譲渡損」という言葉は、漢字である程度理解できると思いますが、売却によって得をしたか損をしたかということです。
その基準は「買ったときより高く売れた」や「ローンの残額より高く売れた」ではありません。
税務上の利益と損失の違いを説明していきます。
譲渡益とは
譲渡益は以下の場合に発生します。
取得費 + 諸経費 < 売却価格
つまり、減価償却後の現在の不動産価格と諸経費の合算額よりも、高い価格で売却した場合に、利益が出たとみなされます。
譲渡損とは
譲渡損は以下の場合に発生します。
取得費 + 諸経費 > 売却価格
例えばローンの残債額2,000万円の物件が、2,500万円で売れたとします。
一見すると「500万円の利益が出た」と考えてしまいそうですが、そうではありません。
取得費(減価償却後の現在価格)が、例えば3,000万円だった場合は、逆に500万円の損失という見方になります。
損失といっても、税務上の見方なだけで、税金を更に払うことはありませんので安心してください。
居住用財産譲渡の4つの特例
買換えの時に使える居住用財産の場合の4つの特例は次の通りです。
①3000万円の特別控除
②所有期間10年超居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の適用
③特定の居住用財産の買い換え特例
④居住用財産の買換えにかかる譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
この特例は「居住用財産」に対しての特例です。
つまり、住んでいたことが前提となりますのでご注意ください。
特例がどのように働くか見てみましょう。
適用の要件にご注意ください。
①3,000万円の特別控除
マイホームを売却して利益が出た場合でも、最大3,000万円まで控除することができます。
(計算式)
譲渡価額 – 取得費※ – 譲渡費用 – 3000万円の特別控除 = 課税譲渡所得
※取得費のうち建物部分は減価償却後の価格
(例)マンションを3,000万円で購入→値上がりして6,000万円で売却。
譲渡価額6,000万円 – 取得費3,000万円 – 特別控除3,000万円 = 0万円
※説明を簡単にするため建物の減価償却と諸経費を無視しています
この時、特別控除の存在があるため所得が発生しません。
したがって、課税はされません。
かなりの額を新居購入に充てられますね。
②所有期間10年超居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の適用
10年以上の所有しているマイホームは、一部軽減税率が適用されます。
不動産を譲渡した場合に、譲渡益が生じる場合の税率をみてみましょう。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 補足 |
5年以下 | 30.63% | 9% | – |
5年超 | 15.315% | 5% | – |
10年超 | 10.21% | 4% | 課税譲渡所得の内6,000万円以下の部分 |
15.315% | 5% | 課税譲渡所得の内6,000万円超の部分 |
居住用財産譲渡の税率(復興所得税として所得税の2.1%が上乗せされています)
この制度は3,000万円控除と併せて使えます。
3,000万円控除を使っても控除しきれなかった場合の税の計算をしてみましょう。
(例)マンションを3,000万円で→値上がりして1億円で売却。
※3,000万円控除の特例も併用します。
譲渡価額1億円 – 取得費3,000万円※ – 3000万円の特別控除 = 課税譲渡所得4,000万円
※説明を簡単にするため建物の減価償却と諸経費を無視しています
納税すべき税は、所有期間10年超で、課税譲渡所得の内6,000万円以下の部分ですから,4,000万円×(所得税率10.21%+住民税率4%)=約568万円
譲渡資産の要件
- ①は所有期間は関係なし
- ①は所有期間が10年超なら②も併用ができる
注意点
新居の住宅ローン控除との重複適用はできない
アベノミクスで都心ではこういう事例もあるでしょう。
羨ましい限りですが、6600万円も利益が上がっても500万円強程度の税金で済めば本当にラッキーですね。
③特定の居住用財産の買換え特例
買換えの特例とは、売却した金額よりも高い金額の家を買うと所得税が発生しない(課税が繰延べられる)という特例です。
以下のようになります。
旧宅売却金額 | 新居購入金額 | 課税の状況 | |
4000万円 | ≦ | 5000万円 | 課税されない(課税が繰延べられる) |
4000万円 | > | 3000万円 | 新居購入額と旧宅売却金額の差額に課税される |
(例1)マンションを3000万円で購入→15年後に値上がりして4000万円で売却。5000万円で新しい住居を購入した。
旧宅売却金額4000万円 – 新居購入金額5000万円=課税譲渡所得▲1000万円 ≦ 0万円 ※説明を簡単にするため建物の減価償却と諸経費を無視しています
この例の場合は課税されません。(課税の繰延べ)
(例2)マンションを3000万円購入→15年後に値上がりして4000万円で売却。3000万円で新しい住居を購入した。
旧宅売却金額4000万円 – 新居購入金額3000万円 = 課税譲渡所得1000万円 ≧ 0万円
※説明を簡単にするため建物の減価償却と諸経費を無視しています
この例の場合は課税されます。
いくら課税されるか計算します。
所有期間5年超のため、長期譲渡に該当します。
以下、計算式です。
1000万円×(所得税率15.315%+住民税率5%)=約20万円
但し、売却する旧宅(譲渡資産)と購入する新居(買換資産)には次の要件があります。
譲渡資産の要件
- 土地と家屋が共に譲渡した年の1月1日における所有期間が10年超
- 居住期間が通算10年以上
- 売却金額が1億円以下
買換資産の要件
- 譲渡年内に購入するか、税務署長の承認をえて翌年中に購入(同時売買の場合は問題ないですね
- 家屋の床面積50㎡以上(登記簿面積)かつ土地面積500㎡以下
- 中古の住宅の場合は新築後25年以内または新耐震基準に適合していること、または既存住宅売買瑕疵保険に加入しているもの
注意点
- 新居の住宅ローン控除との重複適用はできません。
- 長期譲渡の所得税率は、②10年超所有軽減税率の特例は適用できず、5年超の長期譲渡所得の税率が適用となります。
④居住用財産の買換えにかかる譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
今度は居住用財産の譲渡で譲渡損失が生じる場合をみてみましょう。
不動産の譲渡損失は、他の不動産の譲渡益とだけ損益通算でき、他の事業所得や所得税とは損益通算ができないのが原則です。
しかし、居住用財産の場合は、次に説明する④の特例の適用によって、他の事業所得や所得税との損益通算が認められています。
居住用財産を買換えをする人が、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年超の居住用財産を譲渡して、譲渡損失が発生した場合、他の所得と損益通算できます。
控除しきれない場合は、更に翌年からは3年間の繰越控除することができます。
(例)6000万円でマンションを3000万円で売却。
新たに4000万円の住宅を購入した。
(計算式)
譲渡価格3000万円 – 旧宅の取得価格6000万円 = 譲渡損失3000万円
※説明を簡単にするため建物の減価償却と諸経費を無視しています
譲渡した年~翌4年目まで給与所得金額が600万円と仮定します。
譲渡からの年数 | 計算 | 所得税・住民税(所得割額)課税 |
譲渡した年 | 600万円 – 3000万円=▲2400万円 | なし |
翌1年目 | 600万円 – 2400万円=▲1800万円 | なし |
翌2年目 | 600万円 – 1800万円=▲1200万円 | なし |
翌3年目 | 600万円 – 1200万円=▲600万円 | なし |
翌4年目 | 600万円 – 0万円=600万円 | 600万円の給与所得全額に課税 |
※繰越控除は3年目で終了
譲渡資産の要件
- 土地と家屋が共に譲渡した年の1月1日における所有期間が5年超
- 居住期間は制限なし
- 土地の譲渡損失は500㎡以下の相当する金額のみ対象
買換資産の要件
- 譲渡年内に購入するか、税務署長の承認を得て翌年中に購入(これも同時売買の場合、問題ないですね)
- 家屋の床面積50㎡以上(登記簿面積)
- 新居について金融機関から借り入れ、償還期間が10年以上の住宅ローンがあること
- 中古の住宅は①新築後25年以内または②新耐震基準に適合していること、または③既存住宅売買瑕疵保険に加入しているもの
まとめ
不動産に関する税金は難しいですが、適用すると大きな額の税金が控除されることもあります。
不動産の税金に留意して不動産の同時売買を成功させましょう。
税はあなたの状況や個別の不動産によって適用される条件がたくさんありますので、実際の売買にあたっては必ず専門の税理士にご相談ください。