不動産売却の迷惑電話の対処方法
不動産会社から、マンションやアパートを売却してほしいという迷惑電話がかかってくると問題になっています。
「あなたが所有しているマンションを買いたい人がいる」
「うちが仲介をして高く売るから任せて欲しい」
という電話が執拗に、しかも頻繁にかかってくることがあります。
鬱陶しい電話を止めるのはどうすればいいのでしょうか?
先に結論を言うと、たくさんかかってくるすべての会社からの電話を止めるのは非常に困難ですが、国土交通省や各自治体の管轄に相談することで解決に進む場合があります。
そのためには、売却しないという意思表示をしたけれども何度も電話がかかってきたという証拠を残す必要があります。
なぜ電話がかかってくるのか、どのような会社から売却してくれと迷惑な電話が来るのかという背景の部分から、具体的な対処法までを解説していきます。
マンション売却の迷惑電話とは?
知らない人も多いかもしれませんが、マンションを所有している人に「売ってほしい」という売却の営業電話が執拗にかかってくるということです。
このような苦情が多数寄せられています。
こんな苦情が
- 全くマンションを売るつもりがないのにしつこい
- 何度も電話がかかってきて電話対応に時間が取られて迷惑
- 自分の電話番号をどうして知ったのか
- どうして自分の所有物件を知っているのか気味が悪い
なぜ「マンションを売却してほしい」と電話が?
もちろん営業がかかってくるのは利益のためですが、不動産業者は主に次のように利益を得ています。
不動産業者の利益
- 仲介手数料
- 転売したときの差益
巧妙な電話営業のトーク
このような業者は、電話で次のように切り出して来ます。
巧妙な手口
- あなたのマンションを買いたい人がいる
- 今が一番高く売れる時期なので売った方がいい
- 不動産を購入したい投資家がたくさんいる
- 外国籍の客が高く買ってくれる
このほかにも実に色々な切り出し方で営業電話をかけてきます。
お分かりかと思いますが、実は「買いたい人がいる」というのは嘘です。
どうして電話をかけてまで営業して来るのか?
なぜ電話をかけて来るのかと言うと、理由は次の二つです。
迷惑電話が来る理由
- 仲介するための売り物件が欲しいから
- 転売して利益を出すため
このために、何人もの営業マンを雇って電話をかけているのです。
あわよくば、安い価格帯を提示して、自社で安く買取って保有してしまうためにあなたに電話をかけています。
いずれにしても、あなたの大切な所有物件を買い叩いて安く仕入れることが目的です。
わざわざ電話をかけてこなくても、すでに売りに出ている物件はたくさんあります。
それがどうして電話をかけてきてまで営業して来るのかと言うと、より安く買い叩いて転売して利益を得るためです。
そのため、そもそも売却の意思のない人にアプローチして、売却を促し、買取業者に流すというケースが非常に多いです。
連絡してくるのは投資不動産系
ほとんどの会社は投資用不動産の会社です。
ワンルームマンションのオーナーが特にターゲットになりやすいようです。
マンションだけでなく、一棟のアパートのオーナーにまで連絡が来ているようです。
多いのは、投資系の仲介会社や売却専門の会社、または、買取業者に横流しするような会社です。
連絡先は名簿や謄本の情報から漏れる
そのような業者は名簿業者からアパート所有者や投資マンションの所有者のリストを購入して人海戦術的に電話営業をしています。
登記簿から所有者事項を見れば、物件所有者と住所がわかります。
この個人情報保護の時代にあっても、電話番号も固定電話でNTTの加入権者であれば、データベースから拾ってくることができます。
住所もしくは名前と照合することによって可能なのです。
では携帯電話の番号はどこから入手したのか?というのは分かり難い部分がありますが、例えば販売会社のリストを誰かがキックバック目当てで流出させたり、別のwebサイトなどの登録情報からリスト屋に情報が売られたり、などのようです。
リストから削除してもらうには?
削除してほしいと依頼すれば、基本的には業者は削除しなくてはいけません。
ただ、自分の情報の削除を業者に頼んでもあまり効果的ではないと考えた方が良さそうです。
言ってみれば、そのような業者にとってはあなたも狙われているうちの一人ですから、業者があなたのために進んで削除することはありません。
仮に依頼した業者が自分の名前と連絡先を削除してくれたとしても、一つの業者が知っているということは、他の多数の業者にも名簿が行き渡っていると考えた方がいいです。
国土交通省にも多数の苦情が
詳しくは次の国土交通省のサイトをご覧いただきたいのですが、全国で迷惑電話の被害が多いことがうかがえます。
最近、投資用マンションの販売などの不動産取引に関して、宅地建物取引業者から電話による執拗な勧誘を受けたなどの苦情・相談が増えています。
宅地建物取引業法(以下、「法」という。)では、宅地建物取引業者に対し、契約の締結の勧誘をするに際して
〔1〕不確実な将来利益の断定的判断を提供する行為(法第47条の2第1項)
〔2〕威迫する行為(法第47条の2第2項)
〔3〕私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させる行為(法施行規則第16条の12第1号のヘ)
〔4〕勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行う行為(法施行規則第16条の12第1号のハ)
〔5〕相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続する行為(法施行規則第16条の12第1号の二)
〔6〕迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問する行為(法施行規則第16条の12第1号のホ)
などを禁止しています。
ここで想定されているのは、投資用マンションを買ってくれという営業電話が多いのですが、個人投資家が所有しているマンションを売ってくれというのも同様に対処すべきです。
売却の迷惑電話が来た時の対策
ここからは電話がかかって来たら、どう対処するかを考えていきましょう。
先ほどの国土交通省のページに記載のあるように、
・断ったにもかかわらずしつこく電話をかけてくる
・長時間にわたって電話を切らせてくれなかった
・深夜や早朝といった迷惑な時間に電話をかけられた
・脅迫めいた発言があった
・自宅に押しかけられ強引に契約を迫られた
・絶対に儲かるから心配ないと言われた …など
売却勧誘の電話は会う約束を取り付けに来る
まず、電話がかかってきます。
この時の先方の目的は、「あなたが先方と会う約束を取り付けること」です。
というのは、当然ですが会わないことには契約ができないからです。
先方は、会いさえすれば、あなたを説得することに自信があります。
そのため、最初は言葉巧みに電話をかけてきます。
一旦断られても、ターゲットを定めたからには、何度も、それこそ何百回も電話してくることはいといません。
目的を達成するためには練り上げた手段、恫喝、揚げ足取り、なだめなど練り上げた様々なテクニックを弄してきます。
迷惑電話の断り方
あなたは、最初はどんな相手からの電話かは分かりませんから、「興味がありません」とお断りになると思います。
まず、しかし、相手が粘り始めたたら、あるいは一度電話を切った後、二度目にかかってきたら、あなたは「ターゲットにされている、これは油断ならないぞ」と考えて本気で対応することです。
先方は今日一日、さらには次の日も使ってあなたを落とすまで電話しまくる決意を固めています。
もしあなたが、気が弱いなら、そのような人を一人を落とせば何百万円も儲けることができるからです。
ここで、あなたが腹を据えて、先方に言うべき大切な言葉は次の3語です。
「迷惑です」
「二度と電話しないでください」
この3語をはっきり言いましょう。
これは後で法的に重要になる言葉です。
そして、相手がしゃべっていても気にせずに電話を切ります。
長く話させると商談モードに入ってまずいことになります。
それでもしつこく営業して来たら
相手が何を言っても、これ以上のことは言う必要はありません。
また電話がかかって来て、こちらが何度も同じ対応をしていると、
巧みに話を長引かせようとしたり、逆ギレしたりしてなんとか電話を切ることができないようにしてきます。
しかし、こちらは録音応答のように先ほどの3語を繰り返します。
何度電話がかかってきても、この3語を繰り返し言って相手がしゃべっていても気にせずに電話を切ります。
そして、電話の日時をメモしておいてください。
これで、「何を言っても同じ回答ですぐ切られてしまうのでトーク術が使えない」、「諦めよう」と思わせることができ、電話がかかってこなくすることができます。
何度断っても電話をかけて来るときは
しかし、用心を重ねましょう。
相手は一日中何百回も電話をかけてあなたを仕事ができなくさせて職場で困らせるか、疲弊させて会わざるを得ないようにしてやろうと決意を固めています。
大事なことは、電話がかかってきた日時、相手が名乗った、会社名と担当者名をメモしておくことです。
後で通報する時の準備をします。
言ってはいけないのは、「今、手が離せなくて」「考えておきます」など、普通の人が相手で紳士淑女的に対応しようとする言葉、相手が次につなげられるような余韻を持った言葉です。
そんなことが通じるような甘い相手ではありません。
「いつならいいんですか?」
「売却を考えると言いましたよね?」
などと話を長引かせることに繋がりまずい状態になります。
また、こちらがキレてもいけません。
先方の対応マニュアルに「電話の相手がキレた場合」の対処の方法がしっかり書いてあります。
先方には、相手をキレさせておいてから、逆ギレしたり、突然一歩引いた丁寧な対応をして、こちらがキレてしまったことに罪悪感を持たせるようにするなどのマニュアルが完璧にできているのです。
そして通話が長くなれば例えキレていてもトーク術で料理できる相手だと思われてしまうので、切った後に再度かかってくる可能性が高くなってしまいます。
職場にも電話がかかって来て困るときは
電話番号は非通知にしてあるか、システムでコロコロ変わるようにしてあって後で通報されても可能な限り逃げられるように工夫がしてあります。
職場に何度もかかって来て、あなた以外の人が取り次ぐ場合には、会社名、お名前、電話番号、要件を必ず聞いてもらってください。
そして何度電話がかかってもこれを繰り返してもらい、電話の日時をメモに残しておいてください。
あくまで冷静に短く対応し続けて、「この人は逆ギレ勧誘への対応が徹底していて騙すのが難しい」とか、先にも記述したように「何を言っても同じ回答ですぐ切られてしまうのでトーク術が使えない」、「諦めよう」と思わせることです。
断っても電話が続くなら国土交通省へ通報
最終的には、録音して、国土交通省に通報するしかありません。
何度もかけてくる場合は、面倒ですが会社名、宅地建物取引業の免許証番号、住所なども調べてメモしてある担当者名、非通知でなければ電話番号も合わせて通報しましょう。
以上の対応の前提として、こちらが聞きたくもない営業電話を何度もかけてくる行為や断っているのにまだ営業をかけてくる行為は、宅地建物取引業法違反だということを知りましょう。
通報すべきなのはどんな時か?
一度電話を断ってもまだ電話がくれば通報してしまって大丈夫です。
厳密に言えば、以下のような場合に宅地建物取引業法違反になりますので、少し難しいですが覚えておいてください。
宅地建物取引業者が、電話をかけてきて(訪問も含む)、契約の締結を勧誘するに際して次の行為をした時
〔1〕不確実な将来利益の断定的判断を提供する行為(法第47条の2第1項)
〔2〕威迫する行為(法第47条の2第2項)
〔3〕私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させる行為(法施行規則第16条の12第1号のヘ)
〔4〕勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行う行為(法施行規則第16条の12第1号のハ)
〔5〕相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続する行為(法施行規則第16条の12第1号の二)
〔6〕迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問する行為(法施行規則第16条の12第1号のホ)
「国土交通大臣又は都道府県知事」は、「当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる」のです。 (宅地建物取引法第65条第2項)
先ほどの3語は、お分かりのようにこの通報に結びつけるために必要なのです。
「迷惑です」
「二度と電話しないでください」
また、「迷惑だ」と言っているのに電話を執拗にかけてくる行為は、脅迫罪にあたりますし、仕事中であれば業務妨害罪になります。
脅迫になれば警察にも通報できます。
避けるべきだが、会うことになってしまった場合
ここまで電話対応が完璧にできた場合は、会うことになってしまう羽目に陥ることはないと思いますが、万が一、断りきれずに会う約束をしてしまった場合の対応策です。
また、知人や身内の人が投資用不動産を持っていて、このような業者に会う約束をしてしまったことを聞いたら、どうやって助けてあげられるでしょうか。
もし、そう言う業者と会うことになった場合、その当事者である知人とあなたか、あなたが遠方にいて同道できない場合は、信頼できそうな誰か他の人にも協力を仰いで二人以上で会うことと、次のように言うべきセリフをアドバイスしましょう。
相手方は「一人じゃないのか、トーク術が使いづらくなってまずいな」と思うはずです。
会いたくなければアポを断る
会うことに気が進まなければ、会うことを断るべきです。
言いくるめられてしまう不安があれば、他の人に断りの電話を入れてもらうようお願いするか、お願いできる人がいなければ自分で電話をして話が長引く前にすぐ電話を切ってしまいましょう。
喫茶店または飲食店で会う時
契約したくない意思を明確に示すことです。気持ちをしっかり持ちましょう。
そうでないと、契約までさせられて何百万円も損を被る危険に陥ることになるのです。
まず、相手が来ていることを確認してから店に入ります。
そして座らないことにします。
そして相手に「考えたが、やはりお断りすることに決めた」「これ以上付きまとわれるのは迷惑」「二度と電話しないでもらいたい」と言って立ち去ります。
相手が追いかけて来て、なんだかんだ言って来たら「お断りします」「迷惑です」「二度と電話をかけてこないでください」の3語を言います。
一緒にいる協力者も「断る、迷惑だと言っているだろう」と援護します。
この上で相手がさらに迫って来たら脅迫です。
「迷惑だと言っているでしょう。脅迫するなら警察に通報します」と大声で言います。
それでも埒があかないなら、店や周りの人に助けを求めるか、警察に通報してもらいましょう。
相手が自宅までやって来たとき
自宅はある意味密室ですから、自宅で会うのは非常にまずい状況です。
相手が「お宅に説明に伺いたいのですが」と言うので、何百キロも離れているから大丈夫だろうと思い、「ああそうですか」と言って電話を切ってしまったら、新幹線と在来線を乗り継いで本当に上司を連れて来たケースがあるそうです。
こちらが居留守を使っても、ドンドンとドアを叩き、「あなたが、会いたいとおっしゃるから高い交通費と人件費をかけて来たんです」「話を聞くだけでもいいから説明させてください」などと叫んでいます。
しかし、「しょうがない、話を聞くだけならいいかな」と思ってはいけません。
ドアは開けずに、「あんたに売るつもりはない、断る!」「迷惑だ!帰れ! 帰らないと住居侵入で通報する!」と叫びましょう。
そしてしばらくたっても帰らない場合は、本当に警察に通報します。
ここまでする必要があるのです。
自宅に入れてしまった
以上で食い止めれば、これで解決すると思いますが、何か間違いがあって自宅に入れてしまった時、最悪の状態ですがまだ策はあります。
相手は一度自宅に入ったら「しめた!」と心の中で快哉を叫んでいます。
そして契約させるまで居座るハラを決めています。
そのために遠くからはるばる来たのです。
そのため、一度家に入れてしまうと、勝手に説明を始め、何度断っても「まだよくおわかりではないようですね、もう一度おさらいしましょう」などと言って明け方まで粘り、あなたを意識朦朧とさせるか、「しょうがない、契約すれば買えるだろう」とやけにさせて契約に至らせることが目標です。
ですから、最初の段階で怒ってドアを蹴られてもいいから絶対に中に入れてはいけなかったのです。
しかし、もし、中に入れてしまったらどうするか。
あなたが考えるべきことは「いつどうやって安全に警察に通報するか」です。
そのことだけを考えます。
考えられることとしては、退去しない人物に対する対処法として、「不退去罪」の活用です。
刑法第130条
「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
刑法第130条には、上記のように明記されています。
このうちの前半部分は住居侵入罪。後半部分が不退去罪の記述となります。
不退去は、「他人の住居等から出ていくように命じられたのにも関わらず退去しなかった」ことで成立します。
不退去罪は、適法・過失にて住居等に入った場合でも成立します。
ですから、先方が「あんたが入れと言ったんじゃないか」と言われても全く問題ありません。
自宅に入ることについて最初は同意していてもいいのです。
そして、荷物をまとめられるような時間が経過しても相手がまだ居座っていたら、110番通報を自宅からするか、あなたは相手を家に残し外の空気を吸うか、コンビニにでもいくように装い、自分が外に出て安全を確保してから不退去罪で警察に通報するのです。
契約までしてしまっていた場合
ここまでのことを知らずに「不動産売却の契約までしてしまったが解約したい。なんとか方法はないか・・・」とお考えの方の対処法です。
クーリングオフという制度があるのをお聞きになったことがあるでしょう。
しかし、結論から申し上げるとこの制度はあなたが売主の場合は使えません。
クーリングオフの制度は、頭を冷やして考えた結果、「『売主』が宅建業者で『買主』が宅建業者以外の場合(個人でも法人でも良い)に限って8日間のうちなら契約の解除ができる」と言う制度です。
ですから、あなたが買主でなく売主である場合は、残念ながらこの制度は使えません。
ただし、契約をしたから引き渡しまで必ずしも止められないわけではありません。
まだ相手が履行に着手する前であれば、手附倍返しをすれば解除できます。
また、契約に至るまでに、相手方に詐欺の要素があれば取り消しうるのですが、これらの場合、要件が専門的になりますので、なるべく早く弁護士にご相談なさることをお勧めします。
この記事をご参考にして、あなたやあなたの知人や身内の方の財産を狙う転売業者から大切な不動産を守ってください。
なお、記事の対処法を参考にして何らかのトラブルがあっても、一切の責任は負いかねます。