不動産投資をしている物件はベストタイミングで売却することで、大きく利益を得ることができます。
この記事では不動産の売り時について、タイミングの見極め方のポイントを解説します。

不動産売却の基礎知識

不動産を売却する際には、まずこの章で解説する基礎知識を把握しておく必要があります。

不動産売却の要素と注意点

どのような不動産にも共通するポイントとして、資産価値と価格のバランスが取れている物件は高確率で成約となります。
そのためにも「相場」を抑えておく必要があり、さらに不動産投資物件を売却する場合は「利回り」相場の把握も必須です。
利回りとは年間収益総額と物件購入にかかる総額の割合となっており、エリアによって相場が異なります。
このように、不動産売却を始める際にはまず相場の理解が重要といえます。

年数と物件の種別(マンション・戸建)が売却に影響する理由

新築時から年数経過している場合、買い手が購入を躊躇してしまうイメージがありますが、築10年前後のマンションなどは不動産投資用の物件として検討している買主も多いです。
また、不動産種別がマンションか戸建てかによって需要が異なり、戸建てを検討している買い手は居住用が多い傾向にあります。
このことからも、不動産をスムーズに売買するためには、築年数と種別に合わせた売却プランについて、不動産会社に相談することがポイントです。

不動産の売却時期の決め方

不動産を売却する時期は、中古住宅や中古マンションが値上がりしている状況がベストですが、判断するためのコツは次のようになります。

売却時期の決定因子について

不動産を売却する時期を決めるのは売主ですが、突発的に売却を決めるケースは少ないです。
多くの売主は売却タイミングについて悩み、最適な状況だと判断した場合に不動産会社へ相談し、販売を依頼する媒介契約を締結します。
そして、こうした状況判断の決め手になる因子として、「市場動向」や「財政状況」、「税制上の影響」があります。

市場動向の理解

コロナの影響が薄まりつつある一方で日銀が住宅ローン金利引き上げの発表をするなど、2023年において購入希望者が悩む状況にあるといえます。
しかし、こうしたエリアを問わない市況以外にも、保有している不動産があるエリアの市場動向も不動産の資産価値に大きく影響を与えることになります。
特に首都圏ではマンションの価格が高騰していることから、売却を始める時期ともいえます。
このように、エリアの動向を注視しておくことが、不動産売却において重要なポイントです。

自身の財政状況

住宅ローンの返済を継続したまま中古マンションや一戸建てを保有しているオーナーの中には、支払いが厳しいという理由で不動産を売却する人もいます。
そのため、将来返済に困る可能性がある場合は、早めに不動産会社に連絡し、不動産価格の査定を依頼するのがおすすめです。

税制上の影響

不動産を売却する際には売却価格から諸費用や購入した価格を差し引いた額に対し、所有期間に応じた税率を掛け合わせた税金が発生します。
譲渡所得と呼ばれるこの税金は不動産売却における手残り額を決める上で重要な要素となることから、売却価格を決める際に必ずチェックすべきです。
また、有効活用されていない空き家を保有しており、さらに倒壊するリスクがある場合は固定資産税の優遇制度から除外される可能性もありますが、除外されれば固定資産税は6倍になってしまいます。
このように、税制上の影響を踏まえた上で売却時期を見据えることが重要です。

不動産売却の時期による税金の影響

不動産の所有期間が5年以内を短期譲渡所得、5年を超える場合を長期譲渡所得と位置づけされており、それぞれ税率は39.63%と20.315%です。
また、10年を超える長期優良住宅は特別控除を受けられることから、譲渡所得税が最も少なくなるタイミングで売却することもポイントといえます。

地域による売却時期の考慮ポイント

売却時期を考慮する際には、地域の特性を見極めることも重要です。

地域特性と売却の関連性

駅周辺の再開発計画や土地区画整理事業など、街の価値が大きく変わる事業計画が開始されることはよくあります。
このような計画は何年も前から決まっており、スタートする段階で市民に告知されることになります。
つまり、不動産を保有している売主はこれらの情報を基に資産価値が上昇した時期を狙って売却することができるといえます。
その一方で、隣の駅が開発されることで資産価値が下落する可能性もあり、注意点となります。

地方都市での売却時期

地方都市によっては人の動きにメリハリがつくことがあり、9月と4月が多いです。
そこで、このタイミングに入居できるよう不動産を捜索する購入希望者も多いことから、7月〜9月、2月〜4月は高値売却を狙える時期といえます。
その一方で、御盆や年末年始は購入希望者の動きが鈍くなる傾向にあるため、注意が必要です。

税金と住宅ローンについて

不動産を売却する際には譲渡所得税がかかり、購入する際には住宅ローンを組むことがほとんどです。
このように、不動産売買においては売主と買主間で授受される金銭以外にも、費用がかかります。
そこで、この章では不動産売買における税金と住宅ローンについて解説します。

売却時の税金 – 住民税、譲渡所得税等の具体的な計算と対策

不動産を売却し3,000万円の売却益を得た場合、住民税と譲渡所得税は次のようになります。
【譲渡所得税】
・所有期間が5年以内の場合:3,000万円×30%=900万円
・所有期間が5年を超える場合:3,000万円×15%=450万円
【住民税】
・所有期間が5年以内の場合:3,000万円×9.63%=288.9万円
・所有期間が5年を超える場合:3,000万円×5.315%=159.45万円
上記のように、譲渡所得税と住民税はあらかじめ計算式が決まっています。
そのため、税金を抑えるためには課税額を減らすことがポイントとなりますが、課税額は売却時や購入時にかかった費用を「取得費」としてマイナスすることができます。
このことからも、不動産関連の領収書は捨てずに保管しておくことがおすすめです。

住宅ローンと金利の影響

住宅ローンは金利によって総支払額が大きく変わります。
たとえば3,000万円の住宅ローンを1%で35年借りた場合、総額は35,567,804円となりますが、2%の場合は41,738,968円と約620万円高くなってしまいます。
つまり、金利がより安い金融機関や返済プランを選択することが、返済で困らないためのコツといえます。

不動産売却の最適な時期

不動産売却は人の動きに合わせてスタートするのが最適とされており、9月と4月に合わせて計画するのが一般的です。

売却前の査定について

不動産を売却する前には不動産会社に査定を依頼する必要がありますが、複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。
なぜなら、複数の不動産会社から査定額の提示を受けることで相場感を身に付けることができ、さらに極端に査定額が安い会社を除外できるからです。
そのため、不動産一括査定サイトを利用するなど、効率良く不動産会社に査定を依頼することがポイントです。

不動産査定の流れ

不動産査定はまず不動産会社選びからスタートし、売却価格と不動産会社が決まれば物件をインターネット上に公開し、購入予定者を募集します。
その後、内覧を経て買主から購入条件を記載した申込書の提示を受けることになり、受諾することが売買契約に移行します。
そして、売買契約が締結されれば売主と買主は双方引き渡しの準備を進め、準備が完了した時点で引き渡しと決済を行い、売却は完了となります。
ただし、譲渡所得税を確定するための確定申告が必要となるケースもあるため、注意が必要です。

売却時の注意点

不動産を売却する際には買主と契約を締結し、不動産会社に仲介手数料を支払うことになりますが、いくつか注意点があります。
この章で詳しく解説しますので、参考にしてください。

売買契約の注意点

売買契約書には売主と買主それぞれが守るべき「約束事」が記載されていますが、その中でも「契約不適合責任」という売主の責任負担には注意が必要です。
契約不適合とは「目的を達成できない状況」のことで、引渡し後に雨漏りや白蟻被害が発生した場合は契約不適合となり得ます。
この場合、買主からは修補請求だけでなく、代金減額請求や白紙解除などを要求されることがあるため、売却する不動産の状況を事前に把握しておく必要があります。

不動産会社との交渉の注意点

不動産会社に支払う仲介手数料は交渉することができますが、契約後に交渉することはおすすめできません。
なぜなら、不動産会社に販売依頼する際に締結する媒介契約書には仲介手数料が記載されており、売主は支払う義務があるからです。
また、後から価格交渉をした場合、不動産会社の信用を失いかねません。
このことからも、交渉するのであれば依頼時にすべきです。

不動産売却と収益性

不動産投資物件は一般的な物件に比べ、売却せずとも収益を生み出せることから売却するタイミングはよりシビアになります。
そのため、収益が減少する傾向がでる前に売却するのがベストといえます。

収益性を考慮した売却時期の選択

売却時期の判断をする1つの目安に、「デッドクロス」があります。
これは、減価償却額よりも住宅ローンの元金返済額が上回るタイミングのことで、この時期以降は目に見えない部分で利益が減少することになります。
そのため、デッドクロスを見極めることは不動産投資において重要なポイントといえます。
これ以外にも、人気が高い築年数である10年目と、減価償却が終了する20年目もターニングポイントです。

収益停止と売却のタイミング

不動産投資の収益は緩やかに減少するのが一般的であるため、「やめどき」が難しいとされています。
そのため、ある程度売却時期を最初から決めておくことが重要です。
そして、売却時期は不動産が高値売却できることを条件に設定することをおすすめします。

ゆっくりとした売却スケジュールのメリットとデメリット

売却計画を急ぐのではなく、ゆっくりしたスケジュールで組むことで資産価値の推移を見極められるというメリットがあります。
そのため、急いで売却する理由がない人におすすめのスケジュールです。
一方、不動産を保有している間ランニングコストがかかり、経年劣化による資産価値の低下は止められないことから、高値売却が難しくなるのがデメリットといえます。

売却価格と収益の最適バランス

不動産投資は「トータル収益+売却益」がプラスになるよう計画することが、失敗しないコツです。
そのためにも不動産の価値を正しく把握し、ベストな売却タイミングを逃さないことが重要です。

まとめ

不動産を売るタイミングで悩む売主は多いですが、市場の動向や税金面が有利になるタイミングで売却するのがおすすめです。
また、不動産投資物件は収益面とのバランスも重要であることから、早めに不動産会社へ相談することがポイントとなります。