不動産売却では税金が発生することが多く、土地売却も例外ではありません。
そのため売却金額だけでなく経費や税額を考慮して売却プランを立てる必要がありますが、一定の条件を満たした家屋や土地等を売却する際に利用できる特別控除が公開されていることも押さえておくべきです。
こうした特例は保有している不動産を売却する上で大きな節税効果があるため、適用できる制度は売主として理解しておくことが大切といえます。
この記事では土地を売却する上で税金がかからない方法について、解説します。

土地売却でかかる税金の種類は「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」

土地売却した際にかかる主な税金として「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」があり、不動産を売却した金額に応じて変動するといった特徴があります。
これ以外にも不動産を相続や購入によって取得した金額や取得期間で税額が変わるケースもあり、正しく計算方法を理解しておくことが大切です。
この章では土地売却でかかる税金について、詳しく解説します。

税金の種類内容
印紙税売買契約書に貼付する印紙の代金。貼付し消印することで納税したことになる。
登録免許税所有権移転登記や抵当権抹消にかかる税金。
譲渡所得税売却によって利益が発生した際にかかる税金。

土地の売却で消費税はかからない

一般人の売主が所有している不動産を売却した場合は消費税は発生することがなく、買主も土地と建物のどちらも購入しても消費税は免税となります。
ただし不動産会社に支払う仲介手数料や解体費、測量費には消費税が含まれることになるため注意が必要です。
このように、不動産を売却する際には課税対象となる費用と非課税となる費用があることを知っておく必要があります。

印紙税とは

不動産売買契約書の原本には印紙の貼付が義務づけられており、印紙代を諸費用に含めるのが一般的です。
また印紙税額は契約書に記載されている金額によって次のように変動するため、間違いのないよう事前に確認しておくことをおすすめします。

売買価格印紙代
10万円を超え50万円以下200円
50万円を超え100万円以下500円
100万円を超え500万円以下1,000円
500万円を超え1,000万円以下5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下10,000円
5,000万円を超え1億円以下30,000円
1億円を超え5億円以下60,000円
5億円を超え10億円以下160,000円
10億円を超え50億円以下320,000円
50億円を超える480,000円

(引用:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁

登録免許税とは

登録免許税は所有権移転登記にかかる税金となっていますが、司法書士に支払う報酬を合わせて支払うのが一般的です。
ただし地方によっては買主が所有権移転登記費用を負担するケースもあり、不動産会社に確認しておくべきポイントといえます。
なお、土地に抵当権が設定されている場合は抹消した上で所有権移転する必要があり、費用は抵当権1本に対して1,000円が相場です。

譲渡所得税とは

土地を買主に譲渡し利益を得ることを「譲渡所得」と呼びますが、譲渡益を課税額として計算されるのが譲渡所得税です。
この税金は所有期間によって次のように税率が変わることから、売却するタイミングが重要といえます。

短期譲渡所得(所有期間が5年以内):所得税30%、住民税9%
長期譲渡所得(所有期間が5年を経過した場合):所得税15%、住民税5%

上記に加え復興特別所得税の2.1%を加えた金額が税率となり、課税額に掛け合わせることで算出されます。
また、譲渡所得税の課税額は取得費を差し引くことができ、次のような計算式で課税額は計算できます。
売却価格-取得費-売却時の費用
つまり、取得や売却にかかった仲介手数料などの領収書を確定申告の際に使用することで減税できることから、破棄せずに保管しておくことが大切です。

土地売却でかかる税金を節税する方法

土地を売却する際には税金がかかるケースがほとんどですが、国税庁からは税金を控除できる制度が公開されています。
これらの制度を利用することで節税することができ手元に資金が多く残ることから、土地の売却を計画するタイミングで適用要件などを知っておくことが重要です。
この章では土地売却で利用できる代表的な特別控除について解説しますので、参考にしてください。

居住用財産の3000万円特別控除

自分が住むためのマイホームを売却した場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用することができます。
この制度を利用することで居住用財産を売却した際にかかる課税額を3,000万円控除することができ、土地売却において大きな節税効果となります。
たとえば課税額5,000万円で所有期間8年の土地を売却した場合だと譲渡所得税は約1,015万円となりますが、この制度を利用することで課税額は2,000万円となり、約406万円まで下げることが可能です。
このように非常に節税効果が高い制度ですが、以下の要件を全て満たす必要があるため注意が必要です。

  • 空き家になった場合は空き家になってから3年以内に売却すること
  • 更地にした場合は更地にしてから1年以内に売却すること
  • 親族間売買でないこと

相続空き家の3,000万円控除

マンションではない空き家を相続した場合、課税額から3,000万円を差し引くことが可能です。
この制度は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と呼ばれており、使い道のない空き家を売却する際には利用しておきたいおすすめの制度となっています。
この制度は前述した「居住用財産の3000万円特別控除」の適用要件に加え、以下の要件が追加となります。
相続人によってはクリアが難しい内容もあることから、不動産会社や税理士に相談しながら適用可能か確認することをおすすめします。

  • 建物が昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 被相続人以外に居住していなかった建物であること
  • 建物を解体もしくは耐震補強していること
  • 売買代金が1億円以下であること
  • 賃貸にだしていないこと

平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除

この制度はリーマンショックによる景気後退対策の一環として公開されており、リーマンショックの翌年から2年間にあたる平成21年と平成22年に土地を購入した売主が対象です。
この対象期間に購入した土地を平成28年以降に売却した場合は1,000万円を課税額から差し引くことができ、適用要件も少ないという特徴があります。
そのため土地をいつ取得したのかをチェックしておくことが重要といえますが、相続や贈与、遺贈といった理由で取得した場合は利用することができません。
あくまでも売買による購入取得が対象となるため、注意が必要です。

収用等により土地建物を売ったときの特例の5,000万円特別控除

国税庁のHPでは「土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例が受けられます。」とされており、この場合は譲渡所得から最大5,000万円を控除することが可能です。
新幹線や高速道路の新設、既存道路の拡張において所有している土地が計画内に入ってしまうことがありますが、国や自治体に売却する場合であっても譲渡所得税は発生します。
そこでこうした公共事業を円滑に進めるためにも土地収用法などの法律に基づいた工事に関する買取については譲渡所得税の課税額控除が認められており、他の制度よりも控除額が多くなっています。
この制度は居住用財産ではない土地であっても適用することができ、比較的適用要件は少ないといえます。

土地の取得費より安く売る

譲渡所得税は課税額に税率を掛け合わせることで算出され、土地売却によって発生した譲渡益を課税額とみなします。
つまり、土地売却によって「利益がでていない」という状態であれば譲渡所得税が発生していないことになります。
そのためには売却価格を取得費以下にすることが重要となりますが、取得費の根拠となる購入当時の売買契約書や領収書を保管してあることが大切です。
万が一取得時の書類を全て紛失していた場合は売却価格の5%が取得費となり、課税額が大幅に増加してしまいます。
このような失敗をしないためにも不動産に関連する書類は全て保管しておくべきです。

まとめ

土地を売却すると様々な税金がかかりますが、その中でも譲渡所得税は高額になることが多く注意すべき税金です。
そのため譲渡所得税をなるべく抑える方法を選択しながら土地は売却すべきですが、国税庁から譲渡所得税に特化した減税制度が公開されているため、必ずチェックすべきポイントといえます。
なお、これらの制度には利用するための要件が定められていることからあらかじめ要件を確認し、確実に利用できるよう準備しておくことが大切です。