農地を売るのは難しい

農地は原則、農家でなければ有効活用したり売却することはできません。
そのため農地を相続してしまうと放置してしまうケースが多くなっています。
しかし、放置することでトラブルに巻き込まれることもあることから、なるべく売却することをおすすめします。
この章では農地を放置するデメリットと売却するメリットについて解説しますので、農地を所有している人は参考にしてください。

農地をそのまま持っておくデメリット

農地は野菜や米を育てるための土地であるため、土壌の栄養が豊富です。
そのため放置してしまうと草が生い茂ってしまい、虫や害獣の巣になってしまいます。
さらに不法投棄の温床にもなりかねないため、近隣住民とトラブルになりやすいというデメリットがあります。
また、農地は固定資産税の評価額を45%下げられるという特例を受けられますが、管理されていない休耕地は特例が除外されてしまい、その結果固定資産税が高くなってしまいます。
このように、農地を放置することでトラブルが発生しやすく、維持費も高くなるという点が大きなデメリットといえます。

相続した農地を売るメリット

前述したデメリットを考慮しても、トラブルを避けたり維持費を削減するという意味でも相続した農地は売却するメリットが大きいといえます。
また、農地は坪数が大きくなることから売却価格は高額になりやすく、放置しておくよりも金銭的なメリットがあります。
このことからも、相続した農地を有効活用しないのであれば売却すべきです。

農地を売却する方法

農地を売却するメリットは大きいものの、宅地に比べて売却が難しいという側面もあります。
また、宅地に地目を変更する農地転用をしてから売却する方法もありますが、農地のまま売却する方法と同様に注意点があります。
この章で詳しく解説しますので、参考にしてください。

地目は農地のまま売却する

農地を農地のまま売却する場合、買い手は農家になるケースがほとんどです。
この場合は所有権移転の許可だけですむため売却がしやすく、手間もそれほどかからないというメリットがあります。
そのため、農地を売却する際にはまず農地のまま売却する方法を考えるべきです。
ただし、買い手が農家に限定されてしまうため販売期間や売却プランに注意が必要です。

農地転用して売却する

宅地に地目変更する農地転用をして売却する場合は、農家だけでなく誰でも購入することができるようになります。
特に市街化区域の農地は需要が高いことから、農地転用してから売却する方法はセオリーといえます。
その一方で、農地転用は行政書士に依頼することになるため数万円の費用がかかってしまい、さらに宅地にすることで固定資産税が大幅に上がってしまうというデメリットもあります。
このことからも、農地転調して売却する際には費用負担があることを把握し、その上で早期売却できる目途が立っていることがポイントです。

農地売却の流れ

この章では農地売却の流れについて、解説します。
農地は地目によって売却の流れが異なり、どちらの方法にもメリットとデメリットがあります。
そのため、全体のスケジュールを把握した上で不動産会社と相談し、最適な方法を選択することが重要です。

地目は農地のまま売却する場合

農地のまま売却する場合、基本的に農家が買い手となります。
そのため、近隣の農家へ不動産会社から直接購入の相談を持ちかけてもらうか、農協に相談する方法が一般的です。
なお、農協に相談すると売却だけでなく小作人に使ってもらう「賃貸」という提案も受けられるため、おすすめです。
ただし、前述したように農家だけが買い手になるため売却の機会は宅地よりも大きく減ることになり、売れるまで管理し続けなければならないというデメリットがあります。

農地転用して売却する場合

農地転用して売却する場合は、農地のあるエリアが「市街化区域」か「市街化調整区域」かで大きく異なります。
市街化区域であれば農業委員会に農地転用の書類を提出するだけで許可がおりますが、市街化調整区域の場合は許可制となることで非常に難易度が高くなり、その結果転用が難しくなってしまいます。
さらに、市街化調整区域はそもそも建築ができないことから宅地に転用できても買い手がつかないことも多いです。
つまり、市街化区域であれば積極的に転用し、市街化調整区域であれば農地のまま売却するのがセオリーといえます。
なお、市街化調整区域の農地は一般的な不動産会社では仲介を断るケースもあるため、買取専門業者に相談するのがおすすめです。

農地を少しでも高く売却する方法

農地の売却は宅地よりも難しいことから「売れれば良い」という人も多いです。
しかし、せっかく不動産を売却するのであれば少しでも高い方法を知っておくべきといえます。
そこで、この章では農地を少しでも高く売却する方法を解説します。

複数業者を比較する

農地の売却はどのような不動産会社でも可能というわけではなく、農地の売却実績が多い会社に依頼することが重要です。
そのためにも複数の業者に見積の依頼と相談を行い、信頼できる不動産会社を見つける必要があります。
また、その際には買取専門業者を含めておくことで確実に売れるプランを保有した状態で売却方法を検討することができます。
このことからも、まずは複数の業者に農地の売却を相談すべきといえます。

農地を6年以上所有してから売る

農地を所有してから5年以内は税金が高く、6年目以降から税金が半分になります。
つまり、農地を売却するタイミングは原則所有してから6年目以降がおすすめです。
ただし、農地はいつでも売却できる不動産ではないため、「売って欲しい」という買い手がいればすぐにでも売却すべきです。
このような商談を持ちかけられた際には5年以内であっても売却額と手残り額、税金を計算した上で判断する必要があります。

農地を綺麗にしておく

農地が荒れ果てていると整地したり草むしりをする費用が買主に発生してしまうことから、購入意欲が下がってしまうこともあります。
こうした管理を怠ることで売却のチャンスを逃してしまう売主も多いため、注意が必要です。
このような失敗をしないためにも、普段からある程度の管理はしておくべきです。

農地を売却するときにかかる税金

農地を売却する際に必ずかかる税金として、最も高額になるのは譲渡所得税です。
この税金は売却して利益を得た場合に課税され、さらに所有期間によって税率が異なります。
そのため、農地を売却する前には次の計算式と税率を知っておくことが重要です。
譲渡所得課税額の計算式:売却益-売却にかかった諸費用-取得費-取得にかかった諸費用
税率:【所有してから5年以内】39.63%【所有してから6年以上】20.315%

農地売却にかかる費用

農地を売却する際にかかる費用は次の通りです。
売却価格から差し引いて支払うこともできますが、手残り額に大きく影響するためあらかじめ費用を不動産会社に確認しておくことをおすすめします。
印紙代:売買契約書に貼付する印紙の代金。売買代金によって異なるが、契約書の原本が不要であれば負担する必要はない(買主負担となる)。
仲介手数料:不動産会社に支払う成功報酬。売買金額によって計算式が変わる。
登記費用:所有権を移転するための費用。登録免許税と司法書士への報酬を合算して支払うのが一般的。
農地転用費用:行政書士に支払う費用。

まとめ

相続や贈与で農地を所有するケースは増えていますが、売却が難しく処分に困っている人も多いです。
また、農地を放置しておくとトラブルに巻き込まれるリスクが増してしまうため、処分する方向で考える必要があります。
そのため、農地を有効活用する手立てがない場合はなるべく早く不動産会社に相談し、少しでも高く確実に売却できる方法を模索すべきです。
このことからも、まずは複数の業者に早い段階で相談し、売却方法や税金、手残り額を把握することが重要です。