2022年問題で不動産は買い時になる?

巷で噂の2022年問題。
いわゆる生産緑地に関する問題です。

2022年問題というのは、2022年になるとこの「生産緑地」の指定が解除されることで、一斉に売りに出され、供給過多で価格が暴落する、という話です。

不動産の価格が暴落するなどとネット上で騒がれていますが本当なのでしょうか?
詳しく解説していきます。

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そもそも生産緑地の指定とは

生産緑地地区とはなかなか聞きなれない言葉ですね。

少々難しいので最初に簡単にまとめておきます。

生産緑地地区の簡単なまとめ
  • 都市計画によって「市街化するエリア」「市街化しないエリア」を自治体が決めている
  • 「市街化するエリア」では宅地にすべきいう位置付けになる
  • 都市計画上で、宅地にしなければいけない土地を農地として残すための制度

 

生産緑地地区について、意義と背景をもう少し詳しく見ていきましょう

用語の解説

生産緑地地区(せいさんりょくちちく)とは、都市計画上、農林漁業との調和を図ることを主目的とした地域地区のひとつであり、その要件等は生産緑地法によって定められる。市街化区域内の土地のうち、一定の要件を満たす土地の指定制度(生産緑地地区制度)に沿って、管轄自治体より指定された地区を指す。この制度により指定された農地または森林のことを生産緑地(せいさんりょくち)と呼ぶ。

出典:Wikipedia

 

生産緑地の指定とは、生産緑地法(1974公布)に基づき、市街化区域内の土地のうち、一定の要件を満たす土地の指定制度(生産緑地地区制度)に沿って、管轄自治体(市町村)が土地や森林を指定することをいい、指定されるとその土地等は都市計画上、生産緑地地区という地域地区のひとつとなります。

要約
  • 自治体が「生産緑地地区制度」に沿って、土地や森林を指定
  • 指定されると都市計画上では「生産緑地地区」になる

生産緑地法制定の経緯

都市計画法の改正で,都市計画地域は市街化区域と市街化調整区域に区分され,市街化区域は原則として宅地化されることになりましたから、仮に農地であったとしても「宅地化すべきもの」として位置付けられています。

これにより都市近郊の農地はそのほとんどが宅地化されることになったわけですが、下記の観点から計画的に農業地区を残すことが望ましいということから、生産緑地法が制定されるに至りました。

生産緑地法制定の理由
  • 農業を今後とも継続したいという農家があること
  • 公害や災害に備えるとともに良好な都市環境を守る

生産緑地の指定要件

生産緑地地区が指定されるための主な要件としては、市街化区域内の土地であることの他に以下のことがあげられます。

生産緑地地区の指定要件
  • 生活環境機能及び公共施設等の敷地用の土地として適していること
  • 面積が一団で500平方メートル以上であること(現在は、自治体の条例制定により面積要件を300㎡まで引き下げが可能となっています)
  • 農業の継続が可能であること
  • 地権者全員の同意があること

などです。

生産緑地に指定されるとどうなるか?

生産緑地地区の指定がされると、以下のように制限されます。

生産緑地指定による制限
  • 農業を営むために必要な場合に限り、建築物の新築、改築、増築等が認められ、自由な売買やアパート建築などの農業目的以外での使用が出来ない
  • 30年間の営農を続けなければならない
  • 生産緑地としての都市計画の告示日から30年が経過した場合は自治体に買取りの申し出ができる
  • 主たる従事者が死亡などで従事できなくなった場合は同様に自治体に買取りの申し出ができる
  • 自治体が買取らない場合は他の農家などにあっせんする
  • 買取りを申し出た日から3ケ月以内に所有権移転されなかった場合は制限が解除される

生産緑地の指定されると何が良かったのか

端的にいうと税金が安くなります。

1992年に生産緑地法が改正され、自治体から生産緑地に指定された農地では、固定資産税・都市計画税などがそれまで宅地並み課税であったのですが、一般農地と同様に「極めて低い」税額に抑えられることになりました。

この「極めて低い」税額とは、どのくらい低いかというと、通常の宅地に比べて100分の1以下になることも普通です。

また、相続税の納税猶予措置などが適用されます。
しかも、終生、営農を続けるならばその猶予された相続税は納める必要がないのです。

都市部の農地に対する非常に大きい優遇制度です。

生産緑地はどのくらいあるのか

平成29年度の国土交通省の調査によると、生産緑地地区は、東京圏・大阪圏・名古屋圏の3大都市圏を中心に全国で総面積12,843haあります。

生産緑地地区の総面積12,843ha
  • 東京圏7,496ha
    -東京都は3,223ha(うち23区428ha、23区以外2,795ha)
    -東京都以外は4,273ha
  • 大阪圏3,362ha
  • 名古屋圏1,311ha
  • 地方圏は673ha

参照:平成29年度土地所有・利用概況調査報告書

 

内訳は、東京圏7,496haのうち東京都は3,223ha(うち23区428ha、23区以外2,795ha)、東京都以外は4,273ha、大阪圏3,362ha、名古屋圏1,311haです。地方圏は673haです。

三大都市圏 … 「東京圏」、「名古屋圏」及び「大阪圏」
東京圏 … 埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県
名古屋圏 … 愛知県及び三重県
大阪圏 … 京都府、大阪府及び兵庫県
地方圏 … 「三大都市圏」以外の道県で、「北海道」及び「北海道以外」

参照:平成29年度土地所有・利用概況調査報告書

生産緑地指定解除の影響は

指定が解除されるとどのような影響が起こるのでしょうか?

そして、この指定解除がまさに2022年問題と関係しています。

2022年に多くの生産緑地が指定解除

先の述べたように市街化区域内での農地を確保するのが生産緑地ですが、生産緑地の指定は2022年に転機を迎えます。
というのは、1992年に生産緑地法が改正されたときに、生産緑地の指定期間が30年と定められたため、生産緑地の8割が2022年に指定解除を迎えると言われているのです。

ポイント
2022年に生産緑地の8割が2022年に指定解除

2022年問題が起こる経緯

生産緑地の指定期間が30年を迎えると、地主は自治体に買取り請求を行うことができますが、自治体も財源などの問題から購入は困難な事例が多くでることが予想されます。

自治体が買い取れない場合は営農者にあっせんを行うことになりますが、それもうまくいかない場合、生産緑地の指定が解除されます。

すると地主は、今まで著しく低い固定資産税・都市計画税を享受し、相続税の納税猶予の特典があった生産緑地が宅地並みに課税されることになり、今まで生産緑地の指定を受けていた農地所有者である地主の納税額が跳ね上がることになります。

この場合、地主の自己防衛策としては、農業を行なっていた農地を住宅やマンション用地にするのがもっともありそうな対策です。
というのは、もともと生産緑地は市街化区域の中にあり市街化を図る土地であったはずですから周囲の環境は住宅などの用地に向いていると考えられるのです。

その結果、短期間に3大都市圏内に開発用の大量の宅地が供給され、分譲住宅も賃貸住宅も供給過剰になって価格や賃料が下落することが予想されます。

これが「2022年問題」です。

2022年問題への政府の対策

多くの生産緑地が解除されて、上記の懸念どおりに進めば混乱を招きます。

そこで、政府もこの件には色々と対応をしています。

生産緑地法を改正した

政府もこの問題に取り組むべきと考え、対策を打ち、2017年5月に生産緑地法を改正しました。
改正概要は次の通りです。

面積要件を一団で500㎡を自治体で300㎡まで引き下げ可能としました。
建築規制を緩和し、営農継続の観点から、農業を営むために必要で生活環境の悪化をもたらすおそれがないものに限定されていましたが、建築可能なものとして農産物加工施設、農産物等直売所、農家レストランなどが追加されました。

改正の概要
  • 面積要件を一団で500㎡→自治体で300㎡まで引き下げ可能
  • 農産物加工施設、農産物等直売所、農家レストランなどを建築可能と追加
  • 特定生産緑地制度を創設

参照:国土交通省HP

ただし、生産緑地の保全に無関係な単なるスーパーやファミリーレストランなどができることを防ぐため、施設の敷地面積が全体面積の20%以下であること、施設設置者が生産緑地の主たる従事者であること、食材は主に生産緑地及びその周辺地域(当該市町村または都市計画区域)で生産されるものであることなどの基準が設けられています。

特定生産緑地制度に関しては次で解説していきいます。

「特定生産緑地制度」が創設

国土交通省のHPより 生産緑地法 特定生産緑地制度のキャプチャ画面

市町村長は、生産緑地地区の都市計画の告示日から30年を経過する日(申出基準日)が近く到来する生産緑地のうち、その保全を確実行うことが良好な都市環境の形成を図る上で特に有効であると認められるものを、所有者の意向を基に「特定生産緑地」として指定できることとしました。

そして、その買取りの申出ができる時期は申出基準日から10年を経過する日とされました。

さらに、10年を経過する日が近づいた場合は、あらためて所有者などの同意を得て繰り返し10年の延長ができることとしました。

特定生産緑地制度とは
  • 生産緑地の所有者等の意向を基に、市町村は当該生産緑地を特定生産緑地として指定できる。
  • 市町村に買取りの申出ができる時期が10年間延期され、10年経過後に改めて所有者の同意を得て、繰り返し10年間の延長ができる。

ここで地主にとって注意すべきは30年を過ぎた後(申出基準日を過ぎた後)だと「特定生産緑地制度」の指定を受けることはできなくなるため、申出基準日が到来する「前」までに所有者は意向を示す必要があることです。

「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が成立

更に、生産緑地を巡る一連の制度改正では、第三者に貸借しやすくする措置も盛り込まれました。

税制優遇措置を維持したまま、より簡単な条件で生産緑地の貸付が可能になる「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が2018年6月に成立しました。

その法律によれば、都市農地を借りて自ら耕作する場合、契約期間経過後に農地が返ってきますし、地主は相続税納税猶予を受けたままで農地を貸し出すことができます。
また、都市農地を借りて市民農園を開設する場合は、農地所有者からスムーズに直接借りることができ、同じく地主は相続税納税猶予を受けたままで農地を貸し出すことができます。

地主の対応は?

生産緑地を保有している地主はどのような対応をするのでしょうか?

地主の対応は3パターン

地主の対策としては次のような方法が考えられると思われます。

考えられる地主の対応
  1. 自治体に買取りを申請し、土地を売却する。自治体が買えない場合は、住宅デベロッパーなどに売却する。
  2. 自治体に買取りを申請するが、土地を売却できない場合は、宅地並み課税を受け入れ、自ら土地賃貸や賃貸住宅事業などの不動産事業を行う
  3. 生産緑地法の改正を利用し、「特定生産緑地制度」の申請をし10年の延長をする

解説

2022年に買い取り申し出が可能になる生産緑地のうち、4〜5割程度はすでに相続が発生しており、相続税猶予を受けていると言われています。

もし30年の期限が来たとして、地主が、自治体の買い取りを申し出ると、今まで納税猶予を受けていた相続税を現実に支払う義務が生じて多額の税負担が生じることになります。

そのため、実際は地主の大半が「特定生産緑地制度」の申請をして指定延長をする(3)を選ぶのではないかと言われているようです。

ただし、そうは言っても相続も起きていないとか、単に延長を望まない地主もいるでしょうから、やはり宅地の供給が増えることは間違いありません。

そのため、地主が住宅用地の供給増で値下がりする前に売却をと考え、(1)を選択する可能性もあります。

それを狙って、住宅デベロッパーは今も虎視眈々と事業機会を狙っています。

影響の程度はどのくらいか

気になるのがどのくらいの影響かということです。

考察していきたいと思います。

生産緑地指定延長の可能性が強い

結局、多くの地主が行動として何を選択するか、によりますから影響の程度は確実にはどうなるか何ともいえません。

しかし、多くの生産緑地を保有している地主は、指定延長する可能性が強いと見られています。

国土交通省が、東京都23区でもとくに生産緑地が多い練馬区、世田谷区の農家を対象に、生産緑地の指定意向を把握する目的でアンケート調査を実施したそうです。

30年の指定期限が過ぎた場合、10年間の営農継続を条件に「特定生産緑地」として新たに指定延長するかを尋ねたところ、6割以上の人が「全て指定する」との調査結果があるようです。

一部の農地だけでも特定生産緑地の指定を受けて農業を続けていく意向を示した農家は8割にもなるそうです。

国が考えた施策は、2022年問題の影響を最小にしようとしているのですから、その狙いが実現すれば影響は軽微ということがいえると思われます。

土地を利用して事業に踏み切る地主も

一方で、リスクをいとわない地主は土地を活かして自ら事業をおこす選択もできます。

たとえ、宅地並みの課税を受けるとしても、他の大多数の宅地所有者と同等の条件になるだけですから別に不利な条件があるわけではありません。

ですから、住宅事業を行なったり、住宅事業に限らず、保有している土地を生かして別の事業をすることもできます。

 

売却して別の投資を行う可能性も

また、単純に売却で得た資金を別の事業に投資することも可能でしょう。

この場合は生産緑地だった土地で開発が行われることになりますから、宅地の供給圧力が高まるでしょう。

その場合、大半は住宅開発が行われることになると思われます。

 

しかし、このようなケースはあるとしてもそう多くはないのではないかと思われます。

影響は大きくないとの見方も

2022年問題は懸念されているように起きるのでしょうか?

しかし、実際に影響は大きくないとの見方が強いです。

多くの地主は「特定生産緑地制度」を活用する

予想としては、国土交通省のアンケート結果からもうかがえるように、多くの地主が「特定生産緑地制度」を活用して10年の延長を選ぶ選択をして、現在の農地としての利用がかなり続く可能性が高いと思われます。

その理由は、地主としても10年毎に更新し続ければ、相続税の納税猶予がこの先もずっと可能となり子孫に土地を渡していけるわけですから、ご先祖から受け継いだ土地を守っていけるという気持ちが強いのではないかと思われます。

 

農地を利用したコミュニケーションも

日本だけでなく、米国などでも市民が菜園で野菜作りなどをすることで家族や友人たちとコミュニケーションを図る効用が見直されています。

また、都市部でも災害時に避難する場所としても緑の場所の確保が大切だという認識が高まって来ているように感じます。

そして、都市住民が家族と野菜作りを楽しんだり、地産地消のレストランや、野菜直売所を現代的に楽しむような場面が多くなるのではないでしょうか。

地主が自ら農業を行わなくとも「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」などを活用して、専門の農業の担い手に委託することも可能となるように政府が手を打っているため実現しやすいようになっています。

まとめ

住宅デベロッパーに説得されたり、現金化したいと考えて土地を売却する地主は必ずいるでしょうが、先に記述したように2022年に日本で大量の生産緑地が一気に宅地として市場に出てくることは考えにくいと思われます。

 

そのため、2022年問題に限定すれば、現時点では多少の影響はあるにしても影響はそれほど大きくはないと予想します。

したがって、少子高齢化や人口減少、経済の停滞などの問題は別として、2022年問題のみを理由として土地の価格が下落すると予想し、それがために急いで土地を売却することは、現時点では考えなくともよいと思われます。

ただし、地域によっては、生産緑地を所有している地主の行動が土地売却や宅地としての活用の情報がかなり増えてくることも考えられます。

それは、ご自宅や実家の地域周辺の宅地供給増のサインとなります。

ご自分の住んでいる地域がどのように推移するか情報収集に気をつけていきましょう。