不動産売却をした場合には確定申告することが多いですが、どのような書類や申告書を準備しないといけないのかを事前に知っておくことが重要です。
なぜなら確定申告をする理由によって必要書類が異なり、税務署から書類の不足を指摘されることも多いからです。
こうした指摘を受けた場合は期日までに慌てて準備することになってしまい、さらにミスする可能性が高くなります。
このような失敗を避けるためにも、この章では家を売った際に必要となる確定申告の書類と手続きや書類作成の流れについて、解説します。

不動産を売却したら確定申告が必要

不動産を売却した際には確定申告が必要になるケースがあり、「譲渡所得」が発生した場合特例の控除を利用する場合です。
不動産の売却時に発生した譲渡費用の方が取得費よりも高くなった場合、差額を課税額とした税金が発生します。
この税金は「譲渡所得税」と呼ばれており、確定申告することで納税額を決定することになります。
そのため、家を売る際には売却価格だけでなく、取得にかかった費用についてもチェックすべきです。
ただし、譲渡所得税が発生した場合は様々な特例によって控除を受けることができます。
このように、支払い義務のある譲渡所得の確定と控除を利用するために、確定申告が必要となります。

不動産売却での確定申告の必要書類と取得方法

不動産を譲渡することで売却利を得た場合は確定申告し、譲渡所得課税額を決定しなければなりません。
この章では譲渡所得税の税額を決定するために必要な書類の入手場所について、解説します。

確定申告書B様式(第一表)

確定申告書B様式(第一表)とは確定申告の要件にかかわらず必要となる様式で、税務署や市役所で取得することができます。
給与所得や保険料控除、寄付控除などを記載する項目があり、ベースとなる税額を記載し提出するための書類です。
そのため、間違えずに記入するよう先に書類を準備しておくことをおすすめします。

確定申告書第三表(分離課税用)

確定申告書第三表は確定申告書B様式と同様に税務署や市役所で取得できる書類ですが、以下の所得が発生した場合に必要です。

  • 譲渡所得:建物や土地売却、または株式を売却した場合
  • 配当所得:上場株式等の配当を得た場合
  • 雑所得:先物取引やFX、公的年金等、副業に係る所得を得た場合
  • 山林所得:所有期間5年超の山林にある立木を譲渡した場合(伐採した場合を含む)
  • 退職所得:退職金を得た場合

このように、第三表が必要となるケースに譲渡所得が含まれることから、不動産を売却した場合はまず確定申告書B様式と第三表を取りに行く必要があります

本人確認書類

国土交通省からは犯罪収益移転防止法により本人確認が義務付けられており、確定申告をする際にも提出する義務があります。
そして、本人確認書類は顔写真がある身分証明書であれば1種類で問題ありませんが、顔写真がない場合は2種類必要となるため、注意が必要です。
そのため自分が保有している本人確認書類に顔写真がついているかどうかは、チェックしておくべきといえます。
ただし、e-Taxで確定申告する場合は不要です。

登記事項証明書

売却した不動産の所有者が確実に移転しているかどうかの確認に使う書類のことで、正式名称は「全部事項証明書」です。
この書類は法務局で取得することができますが、不動産会社に依頼しネットで取得することも可能です。

譲渡所得の内訳書

譲渡所得の内訳書は不動産を売却した後に国税庁から郵送で送られてくる書類ですが、HPからダウンロードすることも可能です。
譲渡所得税が発生するかどうかは売却益の有無が重要となり、譲渡損失が発生していることを証明できれば課税されないことになります。
このように、売却益の有無を判断するために譲渡所得の内訳書を提出することになり、不動産の購入価格と諸費用、売却価格と諸費用を記載し、最後に譲渡所得税を記入することで税額を計算できます。
そのため、売買契約書だけでなく実際に支払った金額の内訳が分かる書類を集めておくことがポイントです。

取得費用が確認できる領収書の写し

取得費用とは不動産を取得した際にかかった総額のことで、不動産の購入金額だけでなく支払った諸費用も含まれます
諸費用には仲介手数料や登記費用、解体費、測量費、農地転用費用などが含まれますが、金額を証明できる書類は売買契約書と領収書のみです。
よくある間違いとして登記識別情報通知や請求書を添付してしまうケースがあるため、注意が必要です。

譲渡費用が確認できる領収書の写し

取得費用は不動産の購入費用に対し、譲渡費用は売却した費用です。
取得費用と同様に領収書の写しが金額の証明となりますが、国税庁では譲渡費用について次のように定義されています。

  • 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
  • 印紙税で売主が負担したもの
  • 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
  • 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
  • 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
  • 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

ただし、これ以外にも税務署の判断で譲渡費用となるケースがあり、登記費用や解体費、測量費は譲渡費用として認められることが多いです。
そのため、判断に迷う場合は不動産会社か税理士に相談することをおすすめします。

不動産購入時の売買契約書の写し

不動産購入時の売買契約書は不動産の所有期間が長い場合や相続取得の場合、紛失していることもあります。
その場合は不動産会社から取得することもできますが、不動産会社が書類を保管している期間は10年であることが多く、それ以降はシュレッダーしていることが多いです。
万が一契約書を紛失し再取得できない場合は売却価格の5%が購入価格として適用されてしまうため、注意が必要です。

不動産売却時の売買契約書の写し

不動産の売却価格を証明する書類も売買契約書となりますが、登記識別情報通知を売買契約書と間違える売主は多いです。
そのため、必要書類の準備に自信がない人は不動産会社にチェックしてもらう必要があります。

源泉徴収票

2019年以前は源泉徴収票の提出が必要でしたが、2020年以降不要となりました
このように確定申告の必要書類は稀に変更となるため、確定申告の時期には必ず国税庁や最寄りの税務署から公開されている情報をチェックすべきといえます。

不動産売却後の確定申告で控除を受ける場合に必要な書類と取得方法

譲渡所得税は不動産の価値や所有期間によって多額になることから、売却せずに空き家として保有する売主もいます。
こうした不動産取引の停滞を防ぐためにも、譲渡所得税を減らすための特例が公開されています。
この章では譲渡所得税の控除として利用できる特例について、必要な書類と取得方法を解説します。

マイホームを売ったときの特例(マイホームの3,000万円特別控除)

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と呼ばれるこの特例を利用することで、居住用財産を売却した際に譲渡所得課税額から3,000万円控除できます
このように控除額が大きく利用も手軽であることから、多くの売主が利用している特例です。
なお、この特例はB様式と第三表に加えて譲渡所得の内訳書を提出するだけで利用できますが、売却した不動産と現住所が異なる場合は戸籍の附票の写しと消除された戸籍の附票の写しが必要となります。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(相続空き家の3,000万円特別控除)

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は特定の条件を満たした空き家を売却した場合に受けられる特例で、以下の書類を準備し提出することで前述した3,000万円特別控除と同様の控除を受けることが可能です。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 不動産を相続、遺贈したことを証明できる書類
  • 昭和56年5月31日以前に建築されていることが証明できる書類
  • マンションではないことが証明できる書類
  • 被相続人が「独居」であったことを証明できる書類

ただし、この特例を受けるためには次の要件をクリアする必要があるため、事前にチェックしておくことをおすすめします。

  • 相続、遺贈されてから売却する時まで賃貸などに利用していないこと
  • 更地にした場合、更地にしてから1年以内に売却していること
  • 空き家になってから3年以内に売却していること
  • 売却代金が1億円以内であること

詳しくはこちらの記事でも解説しています(当社が運営している別のサイト「空き家パス」へリンクします)
空き家特例は適応される?相続空き家3,000万円特別控除を分かりやすく解説!

マイホームを売ったときの軽減税率の特例(10年超所有の軽減税率)

譲渡所得税を計算する上での税率は所有期間によって変わり、5年を超えると15%となりますが、10年を超えて所有している場合は6,000万円まで10%に軽減させることができます。
この特例はマイホームを売ったときの軽減税率の特例と呼ばれる特例で、譲渡所得の内訳書と全部事項証明書を添付するだけで利用できます。
なお、この特例を受けるためには右の要件を満たしておく必要があります。
日本に住んでいること
家屋と土地を同時に売却すること
更地にした場合、更地にしてから1年以内に売却していること
空き家になってから3年以内に売却していること
取得してから売却するまで賃貸などに利用していないこと
3,000万円特別控除を除く、マイホームの買換えや交換の特例などを利用していないこと

特定のマイホームを買い換えたときの特例

特定の居住用財産の買換えの特例は、令和5年12月31日までに家を売却し住み替えした際に譲渡益の課税を将来に繰り延べすることができます。
この特例を受けるための条件はマイホームを売ったときの軽減税率の特例とほぼ同じとなっており、用意すべき書類は次の通りです。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 10年を超えて居住しており、家が国内にあることが証明できる書類
  • 空き家の場合、空き家になってから3年以内であることが証明できる書類
  • 買換えした不動産の全部事項証明書と売買契約書の写し
  • 確認済証の写しまたは検査済証の写し
  • 低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し
  • 住宅用家屋証明書
  • 住宅省エネルギー性能証明書または建設住宅性能評価書の写し
  • 買い換えた資産が中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであることを明らかにする書類、または耐震基準適合証明書など

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

マイホームを買い替えた場合に売却した不動産において譲渡損失が起きた場合、給与所得や事業所得など他の所得から控除することができます。
この特例は売却における損失分を他の税金から控除できるため便利ですが、3,000万円特別控除や買換え特例などを過去に利用した場合は適用除外となります。
そのため、どの控除を利用すべきかは慎重に判断すべきといえます。
また、この特例を受けるためには次の書類を提出する必要があります。

  • 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書
  • 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
  • 自分が住んでいる家屋のうち国内にあることが証明できる書類
  • 空き家になってから3年以内であることが証明できる書類
  • 所有期間が5年を超えることを証明できる書類
  • 登記事項証明書や売買契約書の写し
  • 年末における住宅借入金等の残高証明書

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は前述した「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とよく似ていますが、「特例」という部分が異なります。
ここでいう特定とは、通常の売却のほか借地権の設定などの譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含みます。
このことからも、買換え特例のように買換えしなくても手軽に利用できることが分かります。
ただし、この特例を利用するためには令和5年12月31日までに売却する必要があったため、現在は利用できない特例となっています。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は、相続取得によって支払った相続税をそのまま取得費に加算できるという特例です。
この特例を利用することで相続取得した不動産の売却手残り額を増やすことができ、積極的に売買することができます。
ただし、相続税を支払っていなければ利用することができず、相続取得してから3年以内に売却しなければならないため、注意が必要です。

まとめ

家を売却した際には確定申告が必要になるケースが多く、申告漏れしてしまうと追徴課税を受けることになってしまいます。
また、確定申告は必要書類の準備や正しい手続きなど、知っておくべきことも多いです。
そのため、事前に書類を準備し問題ないかチェックすることが重要です。

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