不動産業界の構造を解説

不動産と一言で言っても、マンションやビル、一戸建て、倉庫など多岐にわたります。
ここでは、得に住宅関連の不動産の業界の仕組みや流れを中心に解説していきます。

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不動産業界は土地・建物の購入が最も大切であり、そこから全てが始まる

普通の経済常識では、どの産業でももっとも重要で難しいのは「売ること」ですね。
ところが、意外なことに不動産の世界ではもっとも難しいとされ、成功が賞賛されるのは「買うこと」すなわち「用地を仕入れること」「敷地と共にビルを買うこと」なのです。リーズナブルで良い不動産を仕入れるコツを知っていること、または仕入れるための太いルートを持っていることがもっとも大切なのです。

不動産業界は、土地から全てが始まり、土地がないと全く始まらないのです。

その理由は、不動産の世界では立地の良い土地をリーズナブルな価格で確保することさえできれば、その上にそこそこの品質の建物が建てられて、その不動産をさしたる苦労なくマーケット価格で売ったり貸したりするか、自分で使用することができるからです。
そしてそこそこの品質の建物を建てることは資金と資材の限界がない限り、技術力の高い専門の会社に頼めばそれほど難しいことではありません。
そしてそのような会社は日本には多数あります。

一方、良い用地やビルの仕入れは戦いそのもの。
これはインターネットがどれだけ発達しようが間違いなく今後も残る仕事です。
と言うのは自由社会が続く限り、土地はいつも誰かが所有しており、その所有者にアクセスし、その所有者に売る決断をしてもらわなければ「買えない」からなのです。
つまり不動産の購入力は人脈、情報、心理、資金、そして建築の知識のみならず法的会計的知識も必要な総合的な力なのです。

不動産業界とは

大きく分けて住宅業界とビル業界があります。
住宅業界も戸建住宅事業者、マンション事業に分かれますね。
なじみのあるこの業界から見てみましょう。

戸建住宅業界

土地所有者はもともと土地を保有しているか、仲介業者からの紹介で売主と交渉して新しく土地を購入します。
誰もが自分の予算の範囲で最高の土地を買おうとします。
仲介業者もとにかく媒介手数料が入らないと話になりません。
仲介業者はお金があるか、融資がたっぶりつきそうなお客さんは大好きです。
そんなお客さんに土地を紹介して交渉が成立、土地取引が完了したとします。
土地所有者には「住宅金融支援機構」が「フラット35」と言う名称で「銀行」を通じて融資します。
土地所有者に「セキスイ」などの建設事業者が営業し注文を獲得します。
建設業界は土地家屋調査士に測量を依頼し、戸建建物を設計し、施主(建築主)の建設の許可取得を助けて、電気設備(ナショナルなど)・風呂トイレなど衛生設備(TOTOなど)・建設資材会社(木材業者など)から材料を仕入れて大工さんに家を建ててもらいます。
完成後は土地家屋調査士(表示登記)や司法書士(権利登記)に依頼し建物を登記します。
そして所有者が住み始めて、生活を始めます。
建物には保険会社が保険をかけます。
ローンを返済する人にも団体信用生命保険と言う保険がかけられ、返済中に借主が死亡などにより万一返済できなくなると保険金が下りる仕組みです。
地元自治体は建物に固定資産税・都市計画税を課し始めます。
これは自治体の安定収入となります。
以上のように多数の人々が関わるわけですが、所有者に嫌われていてはどの会社も仕事ができません。
そのため所有者は自分の計画と予算にしたがって都市計画法や建築基準法など法律の範囲内ならば自由に建物を建て、所有し活用することができるのです。
ただ、自治体当局だけは所有者の意向ではどうにもなりません。
ただ税金を課されるだけです。

マンション業界

自ら用地を探すか仲介業者に依頼して、用地情報を入手します。
仲介業者は最近購入実績の高い資金力のある会社にまず情報を持ち込みます。
売主と交渉してめでたく用地を取得できた後は戸建注文業界とだいたい同じです。
ただし、マンションは中高層建物ですので、周辺に及ぼす影響が戸建よりも大きくなります。
また、施主はなるべく都市計画で定められた容積率(建物床面積の敷地面積の割合)を目一杯消化して少しでも広い床面積を確保しようとします。
そのため、施主は設計会社または建設会社の設計部門とスクラムを組んで行政当局から建築許可をなんとか取得しなければなりません。
また、都心では中高層建築物を建てる前に近隣住民に説明しなければなりません。
ここで日影問題などで建築紛争が起きる場合があります。
そのため、施主は住民対策にたけた優秀な設計事務所や建設会社と組むことが大切です。建物の許可を得て施工し建設が終わると、マンション業者は建物区分所有権とその敷地権を多数の個人客に販売しなければなりません。
値段の決め方が難しいところです。
価格が高いと売れ残りが出ますし、安いと即日完売となりますが、よく考えると「得べかりし利益」を逃してしまったとホゾを噛むことになります。
ある大手のマンション会社の人は「1戸を残して完売するのが理想」と言っていました。
販売には住宅販売会社を活用します。
販売会社はたいていの場合、マンション事業会社の子会社が多いです。
販売が完了して入居が完了すると多数の所有者=住民により管理組合が組織され、管理組合は管理会社と協議しながら建物の維持管理に努めます。
マンション業界は不動産業界の中では最も売るための戦略・技術が必要となる業界です。
用地を買うのも難しく、近隣折衝も大変、販売も重要ですから、マンション業界は不動産業界の中で一番大変な業界なんじゃないでしょうか。

ビル業界(ホテル・物流・商業施設を含む)

ビル業界はマンション業界と同じで、自ら用地を探すか仲介業者に依頼して、用地情報を入手します。駅近や目抜き通りが優良テナントを集めやすいため、ベラボーに高い用地をそれでも予算内で仕入れる必要があります。
不動産の規模が大きいため、信託銀行が仲介業者としてかなりの存在感があります。仲介業者の紹介により、売主と交渉してめでたく用地を取得できた後はマンション業界とだいたい同じです。
施主(建築主)は設計を建築設計会社に依頼するか、建設会社の設計部門に依頼します。設計と建設を分離する場合は、設計ができたのちは施主は鹿島建設などの建設会社に建設を依頼します。
建物竣工後は施主自らビルを所有することが多いです。
ビル会社はこの後何十年もの長期に亘り、運営管理業務(プロパティマネジメント業務)を行います。
なるべく良い賃料を支払ってくれる信用力の高いテナントを探してきて入居してもらいます。
ビルのメンテナンス業務として電気設備・衛生設備・空調設備などをメンテナンスします。
清掃・警備業務も必要です。
ビルを一棟丸ごと売ることは比較的珍しく、通常は長期に亘ってテナント営業とハードとしてのビルの躯体や設備の維持に力を入れるのがビル業者です。
建物の種類によってテナントが異なります。
例えばホテル建物はホテルテナント、物流施設は物流会社か小売業の配送部門または卸売業者の配送部門、商業施設は小売店舗がテナントになります。
この中で物流施設は高度成長期に工場の跡地だった場所や倉庫だった場所が、今やアマゾンなどEコマースの発達で人気の立地になっています。
物流施設は近くに高速道路のインターチェンジがあることや、そこで働く人を集めやすいことも大切な要素ですね。

その他、病院、官公庁、介護施設、学生寮などもありますが、だいたい自ら所有する形態が多いようです。
特に、病院は自ら所有することが多いです。
病院の建物は耐震性能は高くしなければなりませんし、手術室や空調設備などは独特ですからかなりコストがかさみます。不動産としてはそれほど収益性が高い訳ではないのであまり人気はありません。

不動産証券化業界

今まで、不動産の用途で分類してご紹介してきましたが、次は2001年以降に日本に導入された不動産証券化の業界の仕組みをご紹介します。

リート業界

REITというのはReal Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略称で、日本では2001年に日本ビルファンド(三井不動産系)とジャパンリアルエステイト(三菱地所系)というオフィスを中心としたリートができたのが最初です。

2018年12月時点で60本あります。
上場していますから誰でもいつでも証券会社を通じて投資口を買うことができます。
リートの使命は、オフィスビルなどの収益用不動産を購入し、所有し、ひたすらテナントに建物を貸して賃料を得て、その利益を投資家に年1回か2回配当することです。

リートは自らビルを建設することしません。
竣工したビル・住宅・物流施設・商業施設などを購入します。
それらを、所有し運営している会社のような組織です。これを投資法人といいます。

購入で力を発揮するのはスポンサー企業とのパイプ。

スポンサー企業がビルを一棟づつ開発した後、それをリートが買います。
この時売りと買いの利害が相反しますから勝手な価格で取引することはできません。

購入時は(運営時もそうですが)不動産鑑定会社による鑑定価格が重要になります。

もちろんスポンサー企業以外の外部からも購入することがあります。

不動産を購入する時に、デューデリジェンス業務と呼ばれる建物調査会社による法的・物理的・環境的な調査が行われます。

購入資金は銀行から不動産の40%程度の資金の借り入れを行い、それ以外は株式会社の株式に相当する新投資口を一般投資家または機関投資家に証券会社を通じて発行して資金を調達します。

機関投資家とは金融機関や年金基金、保険会社などです。ビルの運営管理はプロパティマネジメント会社と契約して任せ、ビルメンテナンスはビルメンテナンス会社と契約して任せています。

投資家は投資口という株式に似た仕組みに投資します。株式に似た仕組みなので金融庁と国交省の両方が所管しています。

リートは透明性が高く、不動産の中でもっとも金融に近い存在です。
リートは不動産と金融の両方に精通している資産運用会社が運営を行います。
この仕組みによって一般の方々が都心のビルの一部を所有することができるようになりました。
また投資法人は監査法人、会計事務所、法律事務所とも運営上関係が深いです。
またリートが運営する資産は、オフィスビルだけでなく、賃貸住宅、商業施設、物流施設、太陽光発電装置などのインフラなどがあります。

不動産ファンド業界

リートと同じく資産運用会社が運営する不動産ファンドという仕組みがあります。
資産運用会社が信託銀行などの仲介会社から収益用不動産の紹介を受けると、特別目的会社(Special Purpose Company、つまりSPC)を作り、そのSPCが購入者となって不動産を所有します。
SPCはペーパーカンパニーですので、資産運用会社が様々な投資の判断をする訳です。

資金調達は、匿名組合出資という仕組みを使って主に機関投資家や事業会社など、資金の運用が専門の投資家に投資してもらいます。
ここで言う投資家とは投資のプロ。
世界中から投資資金が集まります。
ソブリンウェルスファンドと言われる国家レベルの資金もあれば、日本の年金基金もあります。銀行から資金も借り入れます。
ファンドは通常、運用期間を設定していてその期間は5年から10年というところです。
運用する資産はリートと似ていて、オフィスビル、商業ビル、賃貸住宅、物流施設などです。
資産運用会社は、不動産鑑定会社、デューデリジェンス会社、保険会社、プロパティマネジメント会社、ビルメンテナンス会社とお付き合いしていることはリート業界と同じです。
また、この業界は金融庁の監督下にありますから、同様に監査法人、会計事務所、法律事務所とも運営上関係が深いです。