一棟アパート経営は売却が鍵。売却時の流れ、費用、コツを徹底解説

アパート売却の初心者からメガ大家さんまで、万人に役立つ情報をまとめました
不動産売却の相談件数が年間300件以上の筆者が、アパートの売却で知っておくべきことをすべて解説します。

まずは一般的なことから解説していきます。

何年も大家さんをしていたり、基本的なことは分かってるよ、という方は読み飛ばしてアパート売却のコツから読んでくださいね。

アパート売却の査定の方法は住宅と違う

まずは基本となるアパートを売却するときの流れや必要書類を説明していきます。

アパートをどのように査定して価格が決まっているのか、分からない方が多いのではないでしょうか?

価格がどのように決まっているのかも解説していきます。

アパートを売却するときの査定方法は?

アパートの査定方法は、取引事例比較法、収益還元法、原価法(積算法)が複合的に使用されます。

つまり、どの方法が一番正しいということではありません。

それぞれの査定方法の役割を見ていきましょう。

取引事例比較による評価

これは過去の事例などと比較して価格を決定する方法ですが、必然的に取引事例の比較は伴います。

なぜかというと、近隣の物件と比較し、購入者は買うかどうかを判断するためです。

ということは、売り出しをするときも、同スペックで明らかに安い物件が出ていると、売り出しをしても注目を持っていかれることは容易に想像できると思います。

つまり、過去に取引された成約事例は周辺の物件の売り出し価格に反映されており、それらの物件と比較検討されるので、取引事例とも間接的に比較されていることになります。

収益還元評価

投資用一棟アパートだと、収益還元での評価はほぼ適用されます。

なぜなら、アパートは賃貸して収益を得るために買われるので、どのくらいの収益になるのかを見込むためです。

投資家によって、どのくらいの利回りを必要とするかが変わりますが、収益物件であれば必ず収益がいくらになるかは計算するので、収益還元の評価は適用されることになります。

原価評価(積算評価)

最後に積算価格の評価です。

アパート売買の市場価格は需要と供給のバランスで決定されますが、積算評価は需要の大きさなどは関係ないため、市場価格とはかけ離れることがあります。

しかし、積算評価は金融機関が融資額を決定する上で参考にするケースが多いです。

そのため、積算評価も間接的にアパート売買の価格に影響しているケースがほとんどです。

アパートの売却に特別な方法はない

実は、アパートを売却するからといって特別な方法はありません。

住宅用の戸建やマンションと同じようにアパートも売買されます。

戸建てなどの不動産売却査定と違うのは査定方法

アパートの売却に特別な方法はないとお伝えしましたが、収益アパートの売買は居住用マンションなどと査定方法が異なります。

これはアパートのみではなく、投資用の一棟マンションも投資用ワンルームマンションも同じことです。

「実需(居住用)」「投資用」などと表現しますが、例えば同じマンションや戸建であっても、「実需」として売却するのか「投資用」として売却するのかで、場合によっては20%以上価格差が生まれることがあります。

アパート売却で必要書類は?

査定方法は違うものの、アパートを売却する時に必要な書類はほとんど住宅の場合と同じです。

必要書類は戸建てなどの不動産売却と同じ

アパートを売却する上で必要な書類は居住用の不動産売却と同じです。

状況によって多少異なりますが、一般的には下記のような書類が必要になります。

  • 登記識別情報(権利書)
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 本人確認書類

もし、権利書を紛失してしまったときの対応はこちらです。

権利書を紛失したら?不動産の売却で大事な権利書について解説

アパートを売却したいがローンが残っていたら?

「アパートを売却したいけどローンが残っているけどどうすればいいか?」という相談を受けることがありますが、投資用アパートを売却する方の多くはローンが残った状態で売却します。

しかし心配はいりません。

ローンが残った状態でもアパートは売却できます。

売却して得たお金を銀行に一括返済、という形式で基本的に対応できます。

 

こちらの記事にも詳しく書いているのでご覧ください。

家を売る時ローンはどうする?売却時の住宅ローン繰上げ返済について解説

もし売却の査定価格<ローン残債という結果になってしまった場合はこちらをご覧ください。

任意売却の方法は?住宅ローンが返せない時に検討すべき任意売却の流れ

アパートを売りに出す時点で必要な書類

売り出し時に必要な書類が、住宅と比較して多くなります。

理由は、間取など建物の状態が分かる資料以外に、収入と支出の状況を買手が見るからです。

  • レントロール
  • 評価証明書
  • 謄本関係
  • その他、収入や支出に関する資料

※物件によって変わります。

なお、このような資料は売却を依頼した担当の仲介業者が準備を手伝ってくれると思います。

そもそも一棟アパート売却って?

一棟アパートを売却するとして、誰が買うのでしょうか?

アパートを売却する時、例えば築30年以上を経過しているアパートなどがあるケースが非常に多いのですが、そのような不動産でも売却できるのでしょうか?

古いアパートでも売れる?

結論は売却できます。問題なく売れます。

古いアパートで問題になるのは「融資がつくかどうか」なのです。

なぜならば、金融機関は物件の築年数によって融資をするかどうかを決定します。

 

築年数と融資のことはこちらでも解説しているのでよければご覧ください。

 

アパート売却相場の見方 | 利回りと売却価格の関係を解説

土地付きのアパート売却と住居用マンション売却の違い

土地付きのアパートを売却するときと、居住用マンションを売却するときは、実は全くと言っていいほど違います。

仲介業者も、各領域得意か不得意かが変わってきます。

売主としては、やることは大きく変わりませんが、買手が見るポイントが全く異なるのです。

利回りを見て他の物件と比較する

アパートを購入する人はアパート経営をしたい人で、投資家です。

近隣の物件と比較して、どちらの方が投資効率がいいのかを重視します。

ここが最も居住用の売却と違うところです。

融資の影響が大きい

これは住宅用のマンションでも言えることですが、投資用一棟アパートの場合は融資を受けられることが前提となります。

融資がどの程度つくかによって、物件の価格が異なるのです。

例えば、近所にある同じくらいの大きさの物件が3,000万円で売却できたとしても、金融機関の評価が全く違えば2,000万円でも売れないこともあります。

居住用マンションの売買と違い、金融機関のアパートへの評価が大きく影響するので、査定が複雑になるのです。

賃貸アパートを売却したあと入居者は?

売買と同時にアパートの住人に退去してもらわないといけないのか?という不安を持っている方は多いのですが、退去しなくて大丈夫です。

むしろ、たくさん入居していた方が買手にとって高評価になります。

アパートを売却しても、入居者は「借地借家法」という契約で入居する権利が守られます。

知り合いがアパートに入居している、という場合でも入居者に迷惑をかけることはありませんのでご安心ください。

木造アパートは売却に不利

木造アパートは売却に少し不利です。

これも、金融機関の評価が関係します。

アパートの耐用年数とは?

アパートには木造、軽量鉄骨、重量鉄骨、RCなどと、構造の種類がいくつかあります。

耐用年数」というのは、簡単に表現すると「アパートの価値が0円になるまでの年数」と言い換えられます。

そしてこの耐用年数が、金融機関の物件の評価に関係するのです。

金融機関の評価が低くなれば、融資が受けづらく、売買価格も伸びません。

その点で木造アパートは売却に不利なのです。

一棟アパート・一棟マンションの耐用年数の一覧表

アパートを売却に重要になる耐用年数は下記の通りです。

これはアパートを購入する時に融資を利用する場合でも役に立つ情報です。

構造耐用年数
木造22年
軽量鉄骨19年
鉄骨34年
鉄筋コンクリート47年

アパート経営が嫌になり売却するケースも

アパートを売却する時の理由は様々ですが、アパート経営はもう面倒だという理由で売却するケースも少なくありません。

特に高齢になってきて管理も面倒だという場合には、そのように考える人が多いようです。

高齢者でなくとも、高く購入してしまい運営できなくなったため、やむなく損切りとして売却するケースもあります。

不動産売却で買取を選ぶと安くなる

居住用不動産の売却にも言えることですが、不動産を売却する時に買取を選択すると安くなります。

買取と仲介の違いは分かりますか?

知らずに買取をお願いするとかなり損してしまうので注意が必要です。

買取 or 仲介内容
買取不動産業者自身が購入すること。その後、他の人に転売することが目的なので、一般的な市場価格から20%~30%程度やすくなります。
仲介買手と売手を繋ぐことです。買取とは異なり、基本的に市場価格で売買されるため、買取よりも高く売れます。

アパート売買は全国で頻繁に行われている

アパートは全国にあり、買いたい人も全国にいます。

例えば東京に住んでいる人が北海道のアパート購入する、などのこともよくあります。

そのため、田舎だから売却できない、古いアパートだから売却できない、というわけではありません。

どんな物件でも売却はできます。

アパートを売却する時の流れとは?

査定方法などは異なりますが、アパート売却の流れはマンションや戸建てと同じです。

基本の流れはマンションの売却と同じ

基本的にはアパートの査定に始まり、売出しを行います。

買手が見つかれば契約し、その後決済・引渡しという流れです。

売却の流れやスケジュールはこちらの記事に詳しく解説していますので、ご覧ください。

 

不動産の売却スケジュールを解説!流れや目安の期間について

アパートを売却するときの税金を解説

アパートを売却する時には税金や経費がかかります。

これも居住用のマンションや一戸建てと変わりませんが、税金はアパートの方が高くなるケースが多いです。

アパート売却の税金はマイホームより高い

アパートを売却する時になぜマイホームよりも税金が高くなるかというと、耐用年数の違いが関係します。

構造非居住用居住用
木造22年33年
軽量鉄骨19年28年
鉄骨34年51年
鉄筋コンクリート47年70年

※軽量鉄骨、鉄骨は骨格材の肉厚によって変わりますのでご注意ください。

 

マイホーム(非事業用不動産)の場合、税務上の耐用年数を1.5倍にした数値が耐用年数になります。

アパートは「事業用不動産」になるので、1.5倍の数値ではありません。

なので、マイホームよりも減価償却が早くなります。

減価償却が早くなれば、売却時の利益が出やすくなるので、税金はマイホームに比べて高くなることになります。

 

売却時の譲渡所得や税金に関してはこちらの記事に詳しく書いてあります。

 

不動産を売ったときの「売却益」と「譲渡所得」。税金計算の方法も

計算が面倒という方は、シュミレーションもあります。

 

不動産売却の税金・諸経費・手取り金額シュミレーション

アパート売却の手数料は他の不動産売却と同じ

手数料も通常の不動産売却と同じです。

売買価格報酬額(税抜き)
200万円以下取引額の5%
200万円超400万円以下取引額の4%+2万円
400万円超取引額の3%+6万円

 

仲介手数料に関してはこちらの記事が分かりやすいので見てみてくださいね。

 

不動産売却時の仲介手数料はいくら?計算方法を分かりやすく解説

アパートを売却の時期やコツについて

アパートの売却を戦略立てて高く売却できるようにすることを「出口戦略」と言います。

この出口戦略は不動産投資の中で重要な要因になります。

なぜかというと、購入後にいくら毎月キャッシュフローが出ていたとしても、売却時に大損をしてしまえばトータルで負けてしまう可能性があるためです。

家賃収入が入っていても売却時に損をすればトータルで投資失敗になる可能性がある

そうならないように、出口戦略を立てて計画的に売却しましょう。

構造によってアパート売却をすべき時期は異なる

構造によって売却をした方がいい時期が異なります。

これは、耐用年数に関係しています。

つまり、耐用年数が残っているうちに売却してしまったほうが、高く売れやすいということです。

できれば耐用年数を20年以上残して売却するのが理想ですが、木造や軽量鉄骨ではフルで20年近くの耐用年数なので、耐用年数を長く取ることは難しいです。

そのため、木造や軽量鉄骨などの物件では、出口戦略が取りにくくなるということになります。

地域によっては耐用年数を超過していても融資が受けられたりすることがありますが、多くの物件は耐用年数がかなり影響します。

もしアパートを購入するという方は、耐用年数と出口戦略には注意を払いましょう。

アパート売却のベストなタイミングは満室の時

アパートが満室だと売却もしやすくなります。

満室の方がアパートの評価が高くなるということは、こちらの記事でも触れています。

 

▼投資用一棟アパートを高く売却!タイミングやコツも解説

 

アパートが満室だと売却に有利なのは次の2つの理由からです。

  • 買主が買ったときから賃料収入が見込める
  • 満室なので、その地域やアパートの賃貸需要が高いと感じる

もし満室にできる場合は、満室にしてから売却するのも高く売る方法の一つです。

マンション売却の時期は「オリンピック前」と言うがアパートは?

価格の予想が難しいのですが、オリンピックの前か後かに関わらず、売れる時に売ったほうがいいでしょう。

持っていると賃料収入は入りますが、例えば今の低金利が終われば、今の市場価格から2~3割くらい売却価格が下がるかもしれません。

なぜなら、購入する人は融資を利用して買うためです。

金利が高くなれば返済額が増えるので、金利が低い今は少々高い価格でも少ない返済額で済むのです。

オリンピックが終わると更に相場が下がると噂されていますが、金利にも注意して見ておくことが必要です。

不動産売却でおすすめのサービスは?

一括査定サイトなどはアパートを売却するときでも便利です。

一括査定サイトは便利なサービスですが、だからといって高く売却できるというわけではありません。

 

▼不動産を簡単に査定するには?一括査定にはデメリットも

アパートを高く売却したいなら、会社のHPを見て、担当者の話を聞き、吟味する他ありません。

投資用マンションの売却との違いは?

投資用マンションの売却との違いも、売主としてはほとんどありませんが、不動産の流通経路が大きく異なります。

投資用マンションは、普通の投資家で購入する人は少ないので、多くの場合業者が購入するのです。

 

▼売り時!投資用ワンルームマンションを高く売るにはどうするか徹底解説

ワンルームマンションの場合は、融資の評価も影響しますが一棟の土地付きアパートほど複雑ではありません。

一棟アパートの方が、土地が付いていることもあって複雑で難しいケースが多いです。

 

アパート一棟買いで失敗した物件は売れるか?

相場を知らずに割高で買ってしまった、という方もいるかもしれません。

そのような場合でも売却は可能ですが、ローンの残債額以上の価格で売れるかどうかが争点になります。

某地銀を利用して購入された方はかなり高額で買われている場合があり、難しいことが多いのですが、ステージングなどを行って運営状況を好転させれば物件の評価も良くなり高く売れるかもしれません。

▼今話題のホームステージングとは?不動産売却で高く売るためのコツ

不動産売却の相場はどうやって調べるか?

住宅用の相場価格は色々な調べ方がありますが、アパートの売却相場は今のところまだ調べにくいです。

というのも、物件の耐用年数や金融機関の評価が前提になりますが、金融機関のアパートの評価方法に関しては各機関で異なります。

また、アパートの評価方法は公になっていないので、厳密には不動産業者でも分かりません。

あくまでも一般的な価格の見方ですが、紹介しておきたいと思います。

 

▼【価格の調べ方】不動産の価格を知りたいときの方法のまとめ

 

アパートの売却相場の見方はこちらの記事にも紹介しています。

 

▼アパート売却相場の見方 | 利回りと売却価格の関係を解説

 

不動産売却で誰かに相談したい時はどうする?

アパート売却に関わらず、不動産の売却はなかなか機会がないので、プロに意見を求めたいものだと思います。

そんなときには知っている不動産業者に相談してみましょう。

知らない不動産会社でも、電話やメールで問合せてみればしっかり対応してくれると思います。

こちらのサイトを運営している代々木不動産でも、売却の相談は随時受け付けていますのでお気軽にご相談ください。